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精霊の祝福。その儀式が行われる今日、王都はお祭り状態だった。
既にシャラが精霊の愛し子だと確定する日なのだと、民だけではなく協会や王族までもが信じている。
それ程、ターナー公爵家の娘が九死に一生を得たという奇跡が強い。
お祭りムードが占めている中、私は一人馬車に乗り協会へ向かう。
父や義母は、シャラをめかし込ませた上、三人で共に協会へ向かったからだ。
『許せない』
『女神様だって自分の子どもだろう!』
私の代わりに怒りを言葉にしてくれる精霊達。
『僕たちの姿が見えないのに、何が愛し子だ』
『性悪は所詮性悪なんだ』
『成長しても性悪なんだ』
『むしろ性悪も成長した』
言いたい放題の精霊達は、今にも地面を揺らしそうだ。
「……まだよ……」
そう、まだ――。
止める私に、精霊達も意をくんだよう頷く。
協会へ着けば、最後に儀式を受けるだろうと思っていたシャラが、最前列で殿下と並び座っている。
どういう事かと思えば、そこは目立ちたがり屋のシャラ。自分が最初に儀式で確定させ、殿下は王太子となり民衆パレードを行うというのだ。
……どこから、そんな自信が現れるというのか。
溜息をつきながらも、私は端の席へ座る。
時間になり、いつもは神殿の奥へと隠されている女神像の前へ堂々と立つシャラ。
愛し子であれば、女神像へ手をかざすとされている。そんな女神像に何かあってはいけないと、いつもならば奥深くで保管されており、この日だけ外へと出されるのだ。
「私が愛し子よ」
そんな言葉を放ちながら、女神像へ手をかざすシャラ。
しかし、女神像が光る事はない。
「え?あれ?」
何度も手をかざすシャラだが、一向に何も起こらない。
周囲からも、どういう事だと騒めきだす。
「……女神像の保管に問題があったのでは?」
「かもしれませんね」
殿下がそんな事を言えば、周囲は頷く言葉を返す。
……心底、呆れかえる。
私が守ってきたものは何だったのかと。
『もういいよね』
――ガラガラガラッ!!
『自分が信じたいものだけ信じるなんて』
『信じるべきは女神様だろう』
怒った精霊達は、協会の屋根を吹き飛ばし、周囲の壁を崩していく。
キャァアアアアアアッ!
どういう事だ!?
何が起こった!?
――まさか、女神様がお怒りなのでは!?
誰が叫んだか分からないが、その言葉に皆ピタリと立ち尽くし、シャラの方を見る。
「そんな事ないわ!だって皆が私を精霊の愛し子だと!」
「……精霊を見た事は……?」
疑問が疑問を呼ぶ中、そんな言葉が返される。
そんな当然の事を、どうして今の今まで気が付かないのだろう。
「シャラは!九死に一生を得たではありませんか!」
「しかし!女神像が反応しないどころか、協会が崩れたんだぞ!」
義母まで参戦して、言い争いが起こる中、シャラが現実を認めたくないと言わんばかりに叫んだ。
「私は!精霊の愛し子です!」
『トドメだ。もう知らない』
『女神像の前で、女神様を愚弄するな』
『所詮これは作り物』
そう言った精霊達は、女神像を――壊した。
既にシャラが精霊の愛し子だと確定する日なのだと、民だけではなく協会や王族までもが信じている。
それ程、ターナー公爵家の娘が九死に一生を得たという奇跡が強い。
お祭りムードが占めている中、私は一人馬車に乗り協会へ向かう。
父や義母は、シャラをめかし込ませた上、三人で共に協会へ向かったからだ。
『許せない』
『女神様だって自分の子どもだろう!』
私の代わりに怒りを言葉にしてくれる精霊達。
『僕たちの姿が見えないのに、何が愛し子だ』
『性悪は所詮性悪なんだ』
『成長しても性悪なんだ』
『むしろ性悪も成長した』
言いたい放題の精霊達は、今にも地面を揺らしそうだ。
「……まだよ……」
そう、まだ――。
止める私に、精霊達も意をくんだよう頷く。
協会へ着けば、最後に儀式を受けるだろうと思っていたシャラが、最前列で殿下と並び座っている。
どういう事かと思えば、そこは目立ちたがり屋のシャラ。自分が最初に儀式で確定させ、殿下は王太子となり民衆パレードを行うというのだ。
……どこから、そんな自信が現れるというのか。
溜息をつきながらも、私は端の席へ座る。
時間になり、いつもは神殿の奥へと隠されている女神像の前へ堂々と立つシャラ。
愛し子であれば、女神像へ手をかざすとされている。そんな女神像に何かあってはいけないと、いつもならば奥深くで保管されており、この日だけ外へと出されるのだ。
「私が愛し子よ」
そんな言葉を放ちながら、女神像へ手をかざすシャラ。
しかし、女神像が光る事はない。
「え?あれ?」
何度も手をかざすシャラだが、一向に何も起こらない。
周囲からも、どういう事だと騒めきだす。
「……女神像の保管に問題があったのでは?」
「かもしれませんね」
殿下がそんな事を言えば、周囲は頷く言葉を返す。
……心底、呆れかえる。
私が守ってきたものは何だったのかと。
『もういいよね』
――ガラガラガラッ!!
『自分が信じたいものだけ信じるなんて』
『信じるべきは女神様だろう』
怒った精霊達は、協会の屋根を吹き飛ばし、周囲の壁を崩していく。
キャァアアアアアアッ!
どういう事だ!?
何が起こった!?
――まさか、女神様がお怒りなのでは!?
誰が叫んだか分からないが、その言葉に皆ピタリと立ち尽くし、シャラの方を見る。
「そんな事ないわ!だって皆が私を精霊の愛し子だと!」
「……精霊を見た事は……?」
疑問が疑問を呼ぶ中、そんな言葉が返される。
そんな当然の事を、どうして今の今まで気が付かないのだろう。
「シャラは!九死に一生を得たではありませんか!」
「しかし!女神像が反応しないどころか、協会が崩れたんだぞ!」
義母まで参戦して、言い争いが起こる中、シャラが現実を認めたくないと言わんばかりに叫んだ。
「私は!精霊の愛し子です!」
『トドメだ。もう知らない』
『女神像の前で、女神様を愚弄するな』
『所詮これは作り物』
そう言った精霊達は、女神像を――壊した。
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