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 今日も朝から小雨が降り続いている。
 晴天の日々が続く……なんて事は、もうここ五年程ないのではないだろうか。

 今日も朝からシャラにドレスを奪われ、雷が鳴り。
 義母に扇子で殴られ、強風が吹き荒れた。
 部屋で一人食事を言いつけられれば、瞬間的な豪雨まで起こった。
 シャラが愛し子だと自慢をすれば、怒った精霊が地面を揺らす事までもある。

 ……どれも、民には……畑に与える影響は少ないと安堵していたが、そんな事が起きていても誰もシャラが愛し子である事を疑いもしない。
 自分で考えるという事を捨て去ってしまったのかと嘆き溜息をついていると、大声と大きな足音が私の部屋に向かってくるのが聞こえた。

『むっ』
『何だ、あいつら』

 誰が来たのか分かった精霊達は一斉に不愉快な顔をする。
 と、同時にノックの音もなく扉が大きな音を立てて開かれた。

「リタ・ターナー!話がある!」
「あ~ん!待ってよ~、アーロン!」

 顔が見えると同時に声を上げたのは、私の婚約者であり第一王子のアーロン・ミッチェルで、何故かその後ろには義妹のシャラ・ターナーが甘い声を出してついてきている。

「……シャラ、殿下を呼び捨ては……」
「話があると言っているのが聞こえていないのか?」

 殿下に対して礼儀を言う前に、身内へ対して注意を行えば、殿下が牽制するような声で遮ってきた。

「ノックもなしに無礼ではありませんか?」
「はっ。何も出来ない奴が礼儀を問うか」

 ならばと殿下に対しても注意をすれば、殿下は鼻で笑い、すすめてもいないのにソファへドカリと座った。
 その隣へ寄り添うようにシャラまでも座る。思わず眉を顰めてしまうが、もう口を開くだけ不愉快さが増すだけだと私も静かに対面のソファへ腰かけた。

「リタ・ターナー。お前は何が出来る?」
「……と、言いますと?」

 いきなりの問いかけに、意図が読めず、思わずこちらも質問で返してしまう。

「シャラは精霊の愛し子で、女神とも言われている程だ。しかし、お前には一体何がある?」

 その言葉に、思わず血の気が引きそうになる。
 この国の為、愛する国の為にと、私はそれだけを支えに生きていたようなものだ。だけれど……この婚約は、立太子をより確実なものへする為に結ばれていただけで……。

「祝福で愛し子だとされる事が確実なシャラの方が俺の婚約者にふさわしいのは分かるよな」
「ごめんなさい、お義姉さまぁ。王室の教育頑張っていたのは知ってるけれど~」

 その謝罪に一体どんな価値があると言うのか。
 思わず怒りが込み上げそうになったが、それ以上に今は殿下の言葉を阻止したい。きっと、そんな事に意味はないのだと理解していても、私はそれにしか縋りつけない。

「殿下!それは……」
「リタ。お前との婚約を破棄する」
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