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この土地が欲しいと近隣の国が攻め込んできたとしても、絶対に落とされる事はない。天候がミシェル王国の味方をするから、何故か攻め込んできた兵士達は土砂に巻き込まれたり、雨で流されたりなどするからだ。
ミシェル王国に辿り着いた頃には兵力は半分以下、しかも皆疲弊している状態だったりする。
その為、人々は皆、精霊に祈り感謝をし、日々暮らし生きている。
そんなミシェル王国は、初代国王と女神との間に二子をもうけたとされている。
第一子である男児は、次期国王として王族の血を繋ぎ、第二子である女児は、この国唯一の公爵の位を貰った。
唯一の公爵家は、王家と共に代々続く女神の血筋。それが、我がターナー公爵家なのだ。
そんな我が公爵家と王家との間で婚約が結ばれたのは、側室に王子が生まれた事に焦った正妻である王妃が、自分の子どもが立太子する基盤を固めようと無理に押し通して、第一王子であるアーロン・ミッチェルと私、リタ・ターナーとの婚約を私が五歳の時に決めた。
……私は、それでも良かった。
政治の発言力とか、権力の傾きとか、そんなのはどうでも良い。
……ただ、愛する人と作った国の……愛すべき子孫達が、豊かに暮らしていけるのであれば……それだけで良かった筈なのに。
「あーもう最悪!雨が降ってくるなんて!」
「今度からは商人を邸に呼びましょう」
買い物から帰ってきただろう二人の不愉快な声が聞こえる。
『ざまぁみろだ』
『女神様を蔑ろにするからだ』
手のひらサイズの人型に羽が生えた姿をしている精霊達は、私の周りを楽しそうに飛んでいるが、人の目に見える事はない。
私が精霊を認識する事が出来るのは……私が女神の生まれ変わりだからだ。
「二人共、大丈夫か?今日はゆっくり家族団らんで食事でもしよう」
父の声が聞こえてくる。
今日は早く仕事を終えたのだろうか。
「あなた、リタはまたシャラをいじめたのよ。罰として呼ばなくて良いわ」
「そうか」
義母がそう言えば、父はそれ以上言う事もなく、私も呼ばれる事はない。
『腐ったな、ターナー公爵家も』
『女神様の血筋を何だと思ってるんだ』
『それでも女神様の家族だから大事にしていたのに』
私以上に憤りを感じている精霊達が、更に雨を降らせ、雷を鳴らせる。
「……国を……民を困らせるような事はしないでね」
私の言葉に、精霊達は返事をする事はないが、不満そうな顔をしながらも雨を弱らせていく。
恩恵程度の雨ならば必要だけれど、それ以上は必要ないのだ。
『……昔は女神様の事も、ちゃんと大事にしてくれていたのに』
『……僕たちのせいだ……』
「そんな事ないわよ」
落ち込む精霊達に、そう声をかける。
……そう、変わってしまった過去を思い出しながら。
ミシェル王国に辿り着いた頃には兵力は半分以下、しかも皆疲弊している状態だったりする。
その為、人々は皆、精霊に祈り感謝をし、日々暮らし生きている。
そんなミシェル王国は、初代国王と女神との間に二子をもうけたとされている。
第一子である男児は、次期国王として王族の血を繋ぎ、第二子である女児は、この国唯一の公爵の位を貰った。
唯一の公爵家は、王家と共に代々続く女神の血筋。それが、我がターナー公爵家なのだ。
そんな我が公爵家と王家との間で婚約が結ばれたのは、側室に王子が生まれた事に焦った正妻である王妃が、自分の子どもが立太子する基盤を固めようと無理に押し通して、第一王子であるアーロン・ミッチェルと私、リタ・ターナーとの婚約を私が五歳の時に決めた。
……私は、それでも良かった。
政治の発言力とか、権力の傾きとか、そんなのはどうでも良い。
……ただ、愛する人と作った国の……愛すべき子孫達が、豊かに暮らしていけるのであれば……それだけで良かった筈なのに。
「あーもう最悪!雨が降ってくるなんて!」
「今度からは商人を邸に呼びましょう」
買い物から帰ってきただろう二人の不愉快な声が聞こえる。
『ざまぁみろだ』
『女神様を蔑ろにするからだ』
手のひらサイズの人型に羽が生えた姿をしている精霊達は、私の周りを楽しそうに飛んでいるが、人の目に見える事はない。
私が精霊を認識する事が出来るのは……私が女神の生まれ変わりだからだ。
「二人共、大丈夫か?今日はゆっくり家族団らんで食事でもしよう」
父の声が聞こえてくる。
今日は早く仕事を終えたのだろうか。
「あなた、リタはまたシャラをいじめたのよ。罰として呼ばなくて良いわ」
「そうか」
義母がそう言えば、父はそれ以上言う事もなく、私も呼ばれる事はない。
『腐ったな、ターナー公爵家も』
『女神様の血筋を何だと思ってるんだ』
『それでも女神様の家族だから大事にしていたのに』
私以上に憤りを感じている精霊達が、更に雨を降らせ、雷を鳴らせる。
「……国を……民を困らせるような事はしないでね」
私の言葉に、精霊達は返事をする事はないが、不満そうな顔をしながらも雨を弱らせていく。
恩恵程度の雨ならば必要だけれど、それ以上は必要ないのだ。
『……昔は女神様の事も、ちゃんと大事にしてくれていたのに』
『……僕たちのせいだ……』
「そんな事ないわよ」
落ち込む精霊達に、そう声をかける。
……そう、変わってしまった過去を思い出しながら。
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