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104.円満な婚約白紙?

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そもそもヒロイン以外が攻略出来るのかという疑問もさながら、攻略方法も一味違うような気がする。確かにヒロインは自由奔放で教養マナーが出来ていないという一面はあるが……あの露出具合はどうなんだ。
カツン、と王太子が靴を鳴らした音で我に返る。カローラの前に立った王太子は隣に居る令嬢の腰を引き寄せたが、王太子の後ろに居るシャルルの口角は上がり、セドリックに至っては顔を下に向けているが肩が震えていて、手をお腹に当てている辺りで笑いを堪えてるのが分かる。
思わず引きつった笑顔になった私とカローラに、王太子はピクリと眉を歪めて反応すると、令嬢は怖いですぅなんて言いながら王太子に身体を寄せて胸を押し当てた。
うーん……前世でも、ここまで露骨なアピールをしてる人を私は見たことがないのだが……本当にそんな手段を使う人が現実に居るんだ……なんて関心してしまう。

「………………殿下、その方は?」

とりあえずゲームの断罪イベント通りに進めるのか、たっぷりと間を置いた後にカローラは問いかけた。ただ、ゲームと違うのは怒り狂ったカローラではなく、思いっきり困惑しかしていないカローラになっているのだが……そしてヒロインである私はカローラから半歩下がった感じで隣に居る。

「モナの事か。彼女はミモナ・エディエス子爵令嬢だ」
「愛称呼びですか」

どことなく牽制を思わせる愛称呼びに対して、一応婚約者としての肩書きがあるカローラは首を傾げながら返した。誰とも知らない子爵令嬢相手に何で?と言わんばかりなのが分かるのは私の立場からだろうか……。
愛称で呼ぶと言う事は親密な仲であると周囲に言ったようなものだ。……いや、もう腰に手を回してる辺り、親密でしかないんだけどね。
カローラの返しにキャッと短い悲鳴を上げて子爵令嬢は王太子の胸に飛び込むような形で顔を隠した。うーん、あざといとはこういう事を言うのだろうか。メイクやファッションを研究して頑張っていたが、こんなテクニックなんて研究した事なかったよ……というか出来ると思えないよ前世の私……。こんなのを目の前で見ていると、思わず意識が斜め上に向いてしまう。

「カローラ!!」

王太子の大きな声で思わず肩がビクリと震える。それはカローラも同じだったようで、少し肩が震えたのが視界の隅で見えた。
本来のイベント通りなら、ここでヒロインを怯えさせるなと言う叱責があったりするわけだが……いや、ヒロインじゃないか。どこぞの子爵令嬢か。

「お前との婚約を円満に白紙へ戻したい!俺はモナを俺に依存させたいんだ!」
「殿下……」

円満に白紙……というか、感激したかのように声を震わせている子爵令嬢に言いたい。その言葉の裏に潜んでいるドエス具合、理解していますか?と。
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