【完結】こんな転生は嫌なので舞台から逃げようと思いますが、逃してもらえません!

かずきりり

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103.謎の令嬢

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響く声は、まるでゲームのようで……声の主は言わずもがな、聴き慣れてもいない王太子殿下だ。

「私、攻略した覚えはないんだけど」

そう言って無駄に胸を張ってしまう私に、カローラも背筋を伸ばして

「……私も追放されようが問題はないけれど……」

と言いながら、声が聞こえた方に向けて歩む。
つい興味があって、野次馬のように私もカローラの後を追いかけると、人が割れた先に王太子が見えた。

「あれは……何?」
「まさにヒロイン以外はゲーム通り……?」

視線の先に見えたものに、私は呆気にとられてしまい、カローラは困惑している。
堂々としている……わけでもなく、どことなく申し訳なさそうなフェリクス王太子殿下と、素知らぬ顔のクロヴィス公爵。王太子の後ろに控え少し困った様子のジルベール騎士団団長補佐。そして、笑いを堪えるかのようなセドリック魔術師団団長と、満足そうに微笑むシャルル宰相補佐。
そんな五人に囲まれているのは、どことなく夜の蝶を思わせるような胸元や太ももを露出させ、身体のシルエットがよく分かるドレスを身にまとって、睫毛バシバシの濃い化粧を施した令嬢だ。
うん。まつエクとか思い出すな~……そんな技術この世界にあったっけ?炭でも塗った?と思ってしまうのは私だけかー?

「私もそう思う……というか……これ逆ハーエンド?まさかの?公爵まで??」
「あ…………」

心の声が聞こえてたのか、カローラが同意を返したけれど、その後に続いた言葉に私は声を失った。
逆ハーレムエンド。攻略掲示板が荒れに荒れたエンドだ。美形に囲まれたヒロインという素晴らしいスチルはともかく、そこに書かれるシナリオは鬼畜の所業だった。拉致、監禁、暴力、監視……全ての攻略対象者達の捌け口になるというもので、最終的にどうなったのかは、はぐらかすように曖昧な表現となっていた。
これで本当に乙女ゲーと言えるのか……むしろ恋愛ジャンルとは程遠いとすら思えるし、むしろ血なまぐさく感じる程だ。

「まぁ……」
「あの令嬢、性懲りもなく」
「下品なドレスね。流石だわ」

私達が呆然と立ち、殿下達がこちらへ向かってきている間、周囲に居る令嬢達の微かな声が耳に入った。
どうやら殿下や公爵を筆頭に終始ベタベタと引っ付いていたり、常に付きまとったり、距離が近かったり、胸を押し当てたり……いや何してんの!?

「アイビー……知ってた?」
「性を振りまく謎の物体が存在していた事は知ってましたよ。害にはならないと判断しましたが」

カローラの言葉に毒舌を返すアイビーだが、確かに害どころか変わりにイベントこなしてくれたの!?ありがとう!と言いたくなる程だ……。
ただ……

「……性を振りまく攻略イベントあったっけ……?」
「ないわね」

私の言葉に、カローラはそう断言した。
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