【完結】こんな転生は嫌なので舞台から逃げようと思いますが、逃してもらえません!

かずきりり

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93.人望人脈が一番です

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領地に戻って早く母に会いたいだろう父は、早朝に颯爽と戻っていった姿は、絶望感に苛まれて肩を落としているわけではなく、どこか吹っ切れたようだった。

「……周囲を味方に出来なければ、潰されるぞ。」

そんな一言を残していった父は、貴族として家を心配している……というわけではなく、心の底から私を心配しているようだった。
しかしながら念の為なのか、馬車に乗り込む寸前にボソリと私にだけ聞こえる声で純潔だけは絶対に守りぬくようにと言われてしまった……父よ。貴方は自分が行ったから私も…………うん、そういう喧嘩ふっかけたから、そう思われても仕方ないか……。
ポピーに聞かれていなかった事に少し安堵しつつも、両思いだと言う事に心がほっこり暖かくなる。





「良かったんじゃない?」

身分が!というポピーの戯言を無視して、手を繋ぎながら学園に登校すると、その姿を見たカローラは、アイビーの膝に乗った状態で全くもってどうでも良いと言わんばかりの返事を返してきた。
というより、密着していちゃらぶしているようにしか見えない状態に、カローラ自身が羞恥から顔を真っ赤にして俯いている。嫌がってはいない辺り、照れているだけだというのが分かるのだが、その状況に私もクラスの皆も呆気に取られている。
何故かクラスに居る、カローラの婚約者である王太子に至っては苦情を呈するどころか、どこかニヤニヤしている所はあるのし、ジルベールに至っては小声で仲がいいと言う事は一緒に王城へ……!等と言っている。
……こいつら、カローラじゃなくてアイビーが心底欲しいのか……。それ以外の問題点はどうでもいいのか!?

「……ていうか……」
「言わないでっ!」

両手で顔を覆って叫ぶカローラは耳まで真っ赤になっている。
むしろこれが父親の耳に入っても良いのだろうかとさえ思えるのだが……いや、もうこれは人の口から口へ噂として流れて最終的に侯爵の耳に入るだろう。
私の怪訝な表情に気がついたアイビーがカローラに向き直ると、更に抱き寄せた。

「面倒な事になれば逃げれば良いのです」
「いやもう今現在この状況から逃げ出したい……」
「国から出ますか?」

若干噛み合ってない会話をする二人に、王太子とジルベールが焦ったように席を立った。

「いや、それは困る!!面倒な事にはしない!」
「アイビー!!一緒にお二人を守りましょう!!私にもカローラ様を守らせて下さい!!」

……二人が恋仲だとか、密着してるとか、そういうのは本当にどうでも良いんだろうな。
というか、もし国から出ていくのがカローラ一人なら王太子は止めもしないんだろうな……いや、アイビーやジルベールが付いて行きそうだから止めるか……。
人望人脈って、ある意味で最高の権力なんじゃないかと思えてしまう瞬間だった。
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