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92.両思いです
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領地までの道のりは長い。父は勿論今夜一晩泊まる事になる。
サロンから父が退室したのを見計らって、ポピーが口を開いた。
「誰か婚約者を作れば、ゲームのルートから逃れられたのでは……?」
「…………」
その言葉に私は何も返す事が出来なかった。確かに別の婚約者を作ればゲームのルートから外れる事は出来るだろう。しかし何だかんだと最高権力者である。そんな保険は要らないし、保険としてかけたつもりが、その人と結婚する事になるなんて御免こうむる。というか……
「ポピーは……それで良いと思ってるの……?」
「……」
「私、ポピーが好きなんだよ……?」
何が悲しくて、好きな人に別の人と結婚する事を勧められないといけないんだろう。
どうして、一緒に居て安らぐ人が居るのに、会ったこともない知らない人と婚約を結ばないといけないのだろう。
それがこの世界の普通とは言っても私は受け入れられない。それが異常だと罵られようと、譲れない。むしろ他の人はどうしてそれを受け入れる事が出来るのだろうかとさえ思えてしまうのは、やはり教育の違いもあるのだろうか。
“普通”と思われる事を教育によって植え付けられるのか。
「…………リズ!?」
思考を他にうつしていたが、胸の痛みが解れる事はなかったのか、目からは大粒の涙が次から次へと止めどなく溢れてきた。
一瞬狼狽えたポピーだが、何かを決意したかのように私に手を伸ばしたが、私はその手を拒絶した。
「……幼馴染の優しさなら要らない。放っておいて」
今は、その中途半端な優しさが何より辛い。勘違いをしてしまいそうになる。
心が弱りきっている時にそんな事をされたら、私はずっと勘違い女になってしまうだろう。幼馴染に戻るなら今しかない。
「……幼馴染に戻……」
「好きだよ」
私が決意を誓う為にも口に出したのに、それを遮ってポピーから欲しい言葉を貰ったと同時に、身体が暖かく包まれる。
「身分がとか、立場がとか、色々考えてたけど……そんなの関係なく伝えても良いのなら……僕もリズが好きだよ」
更に涙が溢れ出してくるのは、先ほどまで流れていた悲しみの涙とは違い、嬉しさから溢れ出た涙だ。
ポピーはポピーなりに考えてくれていたんだ。
確かに平民にとって貴族は身分も違うし、怖いものってイメージだった。それでも追いかけてきてくれて……こうして答えてくれるのに、どれほどの勇気が必要だったのだろうか。
そんな事を考えながらも、私はこの温もりを手放したくないと、ただそれだけを考えてポピーの背に腕を回した。
サロンから父が退室したのを見計らって、ポピーが口を開いた。
「誰か婚約者を作れば、ゲームのルートから逃れられたのでは……?」
「…………」
その言葉に私は何も返す事が出来なかった。確かに別の婚約者を作ればゲームのルートから外れる事は出来るだろう。しかし何だかんだと最高権力者である。そんな保険は要らないし、保険としてかけたつもりが、その人と結婚する事になるなんて御免こうむる。というか……
「ポピーは……それで良いと思ってるの……?」
「……」
「私、ポピーが好きなんだよ……?」
何が悲しくて、好きな人に別の人と結婚する事を勧められないといけないんだろう。
どうして、一緒に居て安らぐ人が居るのに、会ったこともない知らない人と婚約を結ばないといけないのだろう。
それがこの世界の普通とは言っても私は受け入れられない。それが異常だと罵られようと、譲れない。むしろ他の人はどうしてそれを受け入れる事が出来るのだろうかとさえ思えてしまうのは、やはり教育の違いもあるのだろうか。
“普通”と思われる事を教育によって植え付けられるのか。
「…………リズ!?」
思考を他にうつしていたが、胸の痛みが解れる事はなかったのか、目からは大粒の涙が次から次へと止めどなく溢れてきた。
一瞬狼狽えたポピーだが、何かを決意したかのように私に手を伸ばしたが、私はその手を拒絶した。
「……幼馴染の優しさなら要らない。放っておいて」
今は、その中途半端な優しさが何より辛い。勘違いをしてしまいそうになる。
心が弱りきっている時にそんな事をされたら、私はずっと勘違い女になってしまうだろう。幼馴染に戻るなら今しかない。
「……幼馴染に戻……」
「好きだよ」
私が決意を誓う為にも口に出したのに、それを遮ってポピーから欲しい言葉を貰ったと同時に、身体が暖かく包まれる。
「身分がとか、立場がとか、色々考えてたけど……そんなの関係なく伝えても良いのなら……僕もリズが好きだよ」
更に涙が溢れ出してくるのは、先ほどまで流れていた悲しみの涙とは違い、嬉しさから溢れ出た涙だ。
ポピーはポピーなりに考えてくれていたんだ。
確かに平民にとって貴族は身分も違うし、怖いものってイメージだった。それでも追いかけてきてくれて……こうして答えてくれるのに、どれほどの勇気が必要だったのだろうか。
そんな事を考えながらも、私はこの温もりを手放したくないと、ただそれだけを考えてポピーの背に腕を回した。
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