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85.カローラの無謀
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私が危険に陥ればアイビーは姿を現してくれるかもしれない。
そんな思いだけで私は学園を飛び出した後、そのままの姿で貧民街へ向かった。明らかに貴族令嬢だと分かる格好ならば、確実に餌食になるだろう。
「アイビー……」
呟きながら、更に早く走る。
前世の記憶が戻った時、前世と今世との記憶で押しつぶされそうだった。自分が悪役令嬢である事に、未来の絶望に、今すぐ逃げ出したくなった。
そんな時に出会った、前世での推しと同じような風貌を持ったアイビーを側に置く事は、前世で癒されていた時間と同じように、私の心の癒しになっていたのだが、それでもどこか辛く苦しく、押しつぶされそうな日々で、未来の絶望から這い上がる方法が分からなくて……。
それに気がついて、話を聞いてくれて、信じてくれて、寄り添ってくれたアイビーは私にとって何よりも大切な存在で……。
「殿下如きで離れないで…っ!」
涙が溢れて、一筋頬に流れる。
確かに王太子妃になんてなりたくない。でもそれ以上に……
――アイビーと離れたくない――
「お?高く売れそうじゃないか?この娘」
ふと、目の前に誰かが出てきたかと思えば、そんなありきたりなセリフを口にした。
私より背が高くて体つきも良く、明らかにそこらの破落戸よりタチが悪そうだ。
「貴族令嬢様じゃねーの?」
後ろからも声が聞こえて振り返ると、既に数人に囲まれていた。
治安が悪い所では本当に秒で危険に晒されるのね、なんて心の中で呟きながらも、私は自分の勝率がとても低い事は理解した。
素早さで勝てても、大人の男相手に腕力では勝てないからだ。
……まぁ、もうアイビーが居てくれないのなら、どうでも良いや。
そんな事すら思えてくる程に私はアイビーが居なければ生きていく気力さえなくなっているのだと実感した。むしろ、どう生きて良いのか分からない。それこそいっそ、人形にでもなってしまった方が楽に生きられるのではないだろうか……それはただ心臓が動いているというだけになるけれど。
アイビー……会いたい。帰ってきて。
そう願う私の耳に届いたのは……
「カローラ様!!!」
アイビーが出てきてくれる事を期待していた私に聞こえたのは、全く違う人物の声で……。
私の視界には待ち焦がれた銀髪ではなく、赤い短髪で息を少し切らして、瞳を憎悪に燃やしたジルベールが映った。
「……どうして!?」
「その方から離れろ!!」
ジルベールは牽制なのか、王太子の護衛として常に持っていただろう剣を抜いて、破落戸に向かい合うが、破落戸達はそんなジルベールに対し、不愉快に目を細めた後
「おい!!!」
一人の男がそう叫んだだけで、路地裏からゾロゾロと男達が集まってきた。
そんな思いだけで私は学園を飛び出した後、そのままの姿で貧民街へ向かった。明らかに貴族令嬢だと分かる格好ならば、確実に餌食になるだろう。
「アイビー……」
呟きながら、更に早く走る。
前世の記憶が戻った時、前世と今世との記憶で押しつぶされそうだった。自分が悪役令嬢である事に、未来の絶望に、今すぐ逃げ出したくなった。
そんな時に出会った、前世での推しと同じような風貌を持ったアイビーを側に置く事は、前世で癒されていた時間と同じように、私の心の癒しになっていたのだが、それでもどこか辛く苦しく、押しつぶされそうな日々で、未来の絶望から這い上がる方法が分からなくて……。
それに気がついて、話を聞いてくれて、信じてくれて、寄り添ってくれたアイビーは私にとって何よりも大切な存在で……。
「殿下如きで離れないで…っ!」
涙が溢れて、一筋頬に流れる。
確かに王太子妃になんてなりたくない。でもそれ以上に……
――アイビーと離れたくない――
「お?高く売れそうじゃないか?この娘」
ふと、目の前に誰かが出てきたかと思えば、そんなありきたりなセリフを口にした。
私より背が高くて体つきも良く、明らかにそこらの破落戸よりタチが悪そうだ。
「貴族令嬢様じゃねーの?」
後ろからも声が聞こえて振り返ると、既に数人に囲まれていた。
治安が悪い所では本当に秒で危険に晒されるのね、なんて心の中で呟きながらも、私は自分の勝率がとても低い事は理解した。
素早さで勝てても、大人の男相手に腕力では勝てないからだ。
……まぁ、もうアイビーが居てくれないのなら、どうでも良いや。
そんな事すら思えてくる程に私はアイビーが居なければ生きていく気力さえなくなっているのだと実感した。むしろ、どう生きて良いのか分からない。それこそいっそ、人形にでもなってしまった方が楽に生きられるのではないだろうか……それはただ心臓が動いているというだけになるけれど。
アイビー……会いたい。帰ってきて。
そう願う私の耳に届いたのは……
「カローラ様!!!」
アイビーが出てきてくれる事を期待していた私に聞こえたのは、全く違う人物の声で……。
私の視界には待ち焦がれた銀髪ではなく、赤い短髪で息を少し切らして、瞳を憎悪に燃やしたジルベールが映った。
「……どうして!?」
「その方から離れろ!!」
ジルベールは牽制なのか、王太子の護衛として常に持っていただろう剣を抜いて、破落戸に向かい合うが、破落戸達はそんなジルベールに対し、不愉快に目を細めた後
「おい!!!」
一人の男がそう叫んだだけで、路地裏からゾロゾロと男達が集まってきた。
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