上 下
76 / 112

76.ポピーじゃなきゃ嫌だ

しおりを挟む
「どういう事?」

何を問われているか分からない……と思いながらも、黒を基調としたシンプルでシックなデザインのお店ならではなのだろうか、金縁のある少し豪華なカップが引き立てられているかのように差し出された。
個室の為か、店員は紅茶を出したら素早く退室していく。

「いつも結婚結婚って言うけど……リズは逃げたいだけじゃないのかなって」

ギクッと思わず効果音がついてしまうかのように肩を上下させてしまう。そりゃ確かに逃げたいよ!結婚したらルートからは完全に外れるし!むしろ一番安全で確実な逃げ方ではあると思ってる。
そりゃ最大権力者である陛下が動いたらどうなるかは分からないと思うけれど……あ、何か不安になってきたな。

「相手は誰でも良いのなら……」
「それは違う!」

苦虫を噛み潰したかのような表情で言うポピーに、食い気味で否定した。流石に誰でも良いと言うならば言ってしまえば攻略対象の誰でも良くなるし!そもそも貴族でも良い事になるが、私はそんな事を一切思っていない。かと言って平民であれば誰でも良いと言うわけでもない。

「私はポピーが良いの!ポピーじゃなきゃ意味がない!」

そう言うと、ポピーは一気に顔を真っ赤にさせて俯いた。

「……何それ……僕みたいなのでもリズが必要としてくれるならって思ってただけなのに……ただの幼馴染程度にしか思われてないと思ってたのに……」

ボソボソと呟くポピーの声は、独り言のように言っているつもりなのかもしれないけれど、私に全部筒抜けである。

「そりゃ最初は手っ取り早いなとは思ったけど」
「え」
「でもルデウル邸にまでついてきてくれて……」
「うん」
「ポピーの意外な顔も色々見れて」
「……」

実家の事業で毎日必死に生きていたポピーは少し引っ込み思案というか、流されるような所もあったけれど、従者教育を受けて、私を守る為なのか色々と度胸もついたかのようで。必死に色んな知識をかき集める為に本を沢山読んでいた事も知ってる。
私の事業を助ける為に、この国の法律もしっかり調べたりしてくれた事も知ってるし、父の執事ととても相談しながら動いていてくれた事も知ってる。
更には父がポピーの事を年々認めている事も。

「だから、私はポピーが良い」

真剣だと伝える為に、ポピーの目を真っ直ぐに見つめて言い切ると、ポピーは顔を真っ赤にさせながら口をパクパクとさせた。
そうか、今までは本気だと思われてなかったのか、まぁ当たり前かなんて思いつつも、ポピーからの返事は期待していなかった。身分の問題があるからだ。ただでさえ母は貴族じゃないのだ。ルデウル男爵家の事を思えば、私こそ貴族と結婚して繋がりを深めないといけないだろう。けれど、それは嫌だ。
その事をポピーにも伝えようと口を開こうとした瞬間……

「リズ!!!助けて!!!」

何故かカローラが号泣しながら部屋に入ってきた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。 そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

【完結】異世界転生した先は断罪イベント五秒前!

春風悠里
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したと思ったら、まさかの悪役令嬢で断罪イベント直前! さて、どうやって切り抜けようか? (全6話で完結) ※一般的なざまぁではありません ※他サイト様にも掲載中

婚約破棄にも寝過ごした

シアノ
恋愛
 悪役令嬢なんて面倒くさい。  とにかくひたすら寝ていたい。  三度の飯より睡眠が好きな私、エルミーヌ・バタンテールはある朝不意に、この世界が前世にあったドキラブ夢なんちゃらという乙女ゲームによく似ているなーと気が付いたのだった。  そして私は、悪役令嬢と呼ばれるライバルポジションで、最終的に断罪されて塔に幽閉されて一生を送ることになるらしい。  それって──最高じゃない?  ひたすら寝て過ごすためなら努力も惜しまない!まずは寝るけど!おやすみなさい! 10/25 続きました。3はライオール視点、4はエルミーヌ視点です。 これで完結となります。ありがとうございました!

処理中です...