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74.アイビーが欲しいのか

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嫌です!!と全身が叫んでいるかのように、顔面蒼白で白目を剥きながらプルプルと震えているカローラを見ながら、私としては侯爵令嬢のありえない姿!なんてテロップを脳内再生していたりする。誰か写真撮って、動画作ってくれないかなぁなんて思考回路を他へ移す。
ちょっと……これは……アイビーのせいで確定したかのような王太子妃ルートになってしまうのでは?
……悪役令嬢なのに不憫すぎる。

「……ご冗談を」

物凄く嫌そうな顔をして、全身から殺気を漂わせ威圧しながら教室全体に冷気を広げたアイビーに、クラスメート達も胸の前で腕を交差させては肩を抱きしめさすっている。うん、そういう私もそんな格好してるけどね……寒い!抑えて!殺気抑えて!!
セドリックとシャルルも顔面蒼白となって震えているのが分かる。我慢しているかのように無表情で身体を抱きしめる事はしないけれど、小刻みに震えているのが見ただけでよく分かる程だ。
ある意味で変態を超える強者、アイビー。
そんな空気の中でもカローラはアイビーの殺気というより王太子の言葉で震えていて、王太子は笑い飛ばしている。

「なるほど……あくまでカローラの言う事しか聞かないと。面白い」

そう笑いながら言う王太子の興味は尽くアイビーに向いているようだ。
それを理解したかのようにカローラは顔をアイビーに向けると、アイビーも自分が原因で付きまとわれていると思ったのか、バツの悪そうな顔をカローラに向けたが、授業が始まる鐘の音により、この話は終了となった。

「……何か凄くややこしくなりそうだね。気をつけて」

隣の席からポピーがそう耳打ちしてくるのに、思わず赤面する。
学生生活!隣の席からの耳打ち!!
学生生活なんてどれくらいぶりで、青春をいくら謳歌した所で、やはり青春は心弾ませるものなんだ!なんて思いながらも、ポピーの忠告よりもこれからの楽しさに胸を躍らせていたら、ジト目のポピーと目が合った。
あ、はい。すみません。
そんな意図を伝えるかのようにポピーにだけ分かるように頭を俯かせた。
貴族令嬢、使用人や平民に対して、簡単に頭を下げてはいけません。なんて、面倒くさい決まりごと。プライドより大事な事ってあると思うんだけどな。
悪い事をしたら謝る。時に謝罪が自己満足にしかならない時もあるし、謝罪出来ないというのも、とても辛いものだ……けど、この場合は違う。
貴族は謝らない事が前提すぎて面倒くさい。
そんなくだらない事を考えながらも、私は授業を半分聞く。

――シャルルがこの国独自に合わせた簿記の授業を――
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