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57.チョコに負けた女

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ズカズカと入り込んできたセドリックは、挨拶もそこそこに私の前に立つと、またも同じ言葉を繰り返した。

「平民になってどうするの?チョコは?貴族が嫌だからって逃げるって事??チョコはもう作らないの??」

何回チョコって言うんだ、こいつ。本当にチョコしか頭にないのか。私の心を代弁するかのようにカローラが呟いた。

「セドリックの執着はチョコへ。そのうちお菓子の家でも作るのでは?」
「ありえる」
「ありえそう」
「ありえますね」
「お菓子の家って何?チョコで家が作れるの?」

私とポピー、そしてアイビーまでもが同意すると、やはり案の定セドリックは食いついた。本当、どんだけチョコなの!?この人!!

「いや、事業は平民になっても行っていいのなら行いたいですけど……私的にはポピーと結婚して平民になりたいですね。ポピーの許可は貰ってませんが強行突破しようと思ってます……」
「強行突破!?」
「私の!父親の許可も必要だろう!?」

私の言葉に慌てふためくポピーと父。父の許可……?いやもう逃げる気しかない場合は許可云々必要ないと思う……とは言わないでおく。何か悲しそうな顔をしているけれど気にしたら負けだ。母も申し訳なさそうにしているけれど、この二人は、やはり王道恋愛パターンなので引き裂くような事はしたくないし……。
手を口に当ててしばらく考え込んだセドリックが口を開く。

「なら別に王都で事業展開しても良いんじゃない?商人のようになれるわけだし。高位貴族が面倒だと言うなら表立って立つ人間を雇えば良いし。あ~……会いたくないって言うなら王太子筆頭に止めとくよ?」

まさかの味方!?いや、そこで安心して良いのか!?いや、でも自分の邸に住めば良いとか、囲ってこようとしない辺りまだ大丈夫なのか!?自分以外と会わさないようにしているわけでもないし……
色々警戒しつつもセドリックの言葉に耳を傾ける。何かここまで警戒していると自意識過剰なんじゃないかと思えて不安にもなるけど……ヒロイン、めんどくさい。

「あ~でもシャルルは難しいかな。あの帳簿、書き方教えて欲しいって言ってたし……」
「……教えたら、関わってこなくなりますかね……?」
「……どうだろう?あいつは読めないからな~」

いきなりの爆弾。教えたら終わりではないなら怖いんですけど。てか今もどこからか覗いていたりしないよね?
そう思うと思わず背筋が震える。

「それより!王都で事業を始めるならって、色々魔道具作ろうと思って相談にきたんだけど!王都でも買えるようになるなんて最高だし!」

うん、セドリックはやはりセドリックな気がする。そして執着はきっちりチョコに向かった気がする。
チョコに負けたとは思わないよ?色んな意味で残念そうな目をしないで、カローラ。これは喜ばしい事なんだ。
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