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53.とりあえず会場から逃げます
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「このチョコというのは面白い。甘いものから苦いものまで。それに色々なものにも合わせやすい」
「ありがとうございます」
クロヴィスの言葉に頭は下げたまま返事をする。震えて怯えているのがバレないようにしなければ。
カローラは大丈夫だろうかとチラリとカローラの方へ視線を向けると、アイビーがクロヴィスの視界からカローラが遮られるように上手く立っている。王太子が密かに面白がっているような目をしているのは気のせいだろうか。
「……リズ嬢?顔を上げてもらえるかい?」
ピクリと肩が震えるのを止められなかった。怯えてはいけない。この人は“まだ”何もしていないのだから。そう自分自身に言い聞かせて顔をあげる。
「……顔色が悪いようだが?」
「本当だな。リズ嬢、大丈夫か?」
眉を顰めながらクロヴィスがそう言うと、陛下も私の顔色に気がついたのか心配そうに声をかけてくれる。王太子はアイビーを見つめて、ジルベールは相変わらず我関せず。セドリックはチョコに夢中だし、シャルルは私を見つめている。
何このカオス。色んな方向に意識を向けたいが、とりあえず絶対回避したいのは目の前にいるクロヴィスだ。
「少し……いえ、本当はかなり緊張して震えて、今にも意識を失いそうなだけです」
「リズが?」
セドリックが面白そうにそう言うけれど、むしろ緊張のせいにしておきたいんだ!嘘ではないし。
いくら年齢を重ねていたと言っても、おしゃべり大好きOLで、人間関係騙し合いだの顔色伺いだの、そこまでしていたわけでもない。同期とキャッキャ笑い合って、仕事の時間はパソコンに向き合って、上司にお茶出してご機嫌伺いする程度だ!狭い人脈舐めるなよ!
「あら……私もなの……少し体調が良くなくて……一緒に休憩室へ向かいますか?ご案内致しますわ」
アイビーに促されたのか、カローラも病弱を全面に押し出してそう言うと、王太子は不愉快そうな表情をしたが、陛下は見定めるような表情を一瞬だけカローラに向けた。
私としては願ったり叶ったりの逃走だったので、お願いしますと返事をして、二人して場にいる皆に挨拶をして休憩室へ向かった。
「うわ。豪華」
「王太子の婚約者ですから」
部屋に入ると一面キラキラとしていて、目が潰れるかと思った。デコか!某キラキラストーンのデコがそこら中に飾られているのか!と思えて仕方がない。
そんな中でもカローラはソファに腰掛けて、背もたれに体重を預けた。私はお構いなしにベッドへダイブする。
いつの間にか呼ばれたのかポピーが、はしたない、と声を出したが気にしない。
執事と従者の違いだろうか。ポピーは会場に入る事が許されないのだ。そう思うと、こういう会場に足を運ぶのは最後にしたいと思えてしまう。
「ありがとうございます」
クロヴィスの言葉に頭は下げたまま返事をする。震えて怯えているのがバレないようにしなければ。
カローラは大丈夫だろうかとチラリとカローラの方へ視線を向けると、アイビーがクロヴィスの視界からカローラが遮られるように上手く立っている。王太子が密かに面白がっているような目をしているのは気のせいだろうか。
「……リズ嬢?顔を上げてもらえるかい?」
ピクリと肩が震えるのを止められなかった。怯えてはいけない。この人は“まだ”何もしていないのだから。そう自分自身に言い聞かせて顔をあげる。
「……顔色が悪いようだが?」
「本当だな。リズ嬢、大丈夫か?」
眉を顰めながらクロヴィスがそう言うと、陛下も私の顔色に気がついたのか心配そうに声をかけてくれる。王太子はアイビーを見つめて、ジルベールは相変わらず我関せず。セドリックはチョコに夢中だし、シャルルは私を見つめている。
何このカオス。色んな方向に意識を向けたいが、とりあえず絶対回避したいのは目の前にいるクロヴィスだ。
「少し……いえ、本当はかなり緊張して震えて、今にも意識を失いそうなだけです」
「リズが?」
セドリックが面白そうにそう言うけれど、むしろ緊張のせいにしておきたいんだ!嘘ではないし。
いくら年齢を重ねていたと言っても、おしゃべり大好きOLで、人間関係騙し合いだの顔色伺いだの、そこまでしていたわけでもない。同期とキャッキャ笑い合って、仕事の時間はパソコンに向き合って、上司にお茶出してご機嫌伺いする程度だ!狭い人脈舐めるなよ!
「あら……私もなの……少し体調が良くなくて……一緒に休憩室へ向かいますか?ご案内致しますわ」
アイビーに促されたのか、カローラも病弱を全面に押し出してそう言うと、王太子は不愉快そうな表情をしたが、陛下は見定めるような表情を一瞬だけカローラに向けた。
私としては願ったり叶ったりの逃走だったので、お願いしますと返事をして、二人して場にいる皆に挨拶をして休憩室へ向かった。
「うわ。豪華」
「王太子の婚約者ですから」
部屋に入ると一面キラキラとしていて、目が潰れるかと思った。デコか!某キラキラストーンのデコがそこら中に飾られているのか!と思えて仕方がない。
そんな中でもカローラはソファに腰掛けて、背もたれに体重を預けた。私はお構いなしにベッドへダイブする。
いつの間にか呼ばれたのかポピーが、はしたない、と声を出したが気にしない。
執事と従者の違いだろうか。ポピーは会場に入る事が許されないのだ。そう思うと、こういう会場に足を運ぶのは最後にしたいと思えてしまう。
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