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49.宰相補佐シャルル・ギルマン

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「……何で簿記を使ってるのよ……気に入られたのではなくて?」
「それ以外の方法が頭の中に入らなかったのよ……色んな意味で理解できないのよ、大雑把すぎて」

カローラはジト目で私を責めるような言葉を放ってくる。流石カローラ、簿記がどういうものかは理解しているようだ。

「……囲い込まれたらどうするのよ!?王太子ルートを攻略しなさいよ!!」
「!!!!ちょっと待って!盗聴器ってないよね!?」
「「!!??」」

私の言葉にカローラは思い出したかのようにハッとして、ポピーは静かに周囲を見渡しながら私達を扉へ向かわせ、私の私室に誘導した。近くに居た侍女にアイビーへの言付けと部屋の念入りな掃除を頼み、三人で私の部屋へ入ると、一気に肩の力が抜けた。
流石に私の部屋は決まった人物しか入らないし、シャルルの入室は勿論ないので、そう考えると少しは安心かもしれない。

「……シャルルに目をつけられたら、シャレにならないわよ……」

肩を落としてカローラがそう呟いたのを見て、私は頷いた。
ギルマン侯爵家の長男で、宰相の補佐についているシャルル・ギルマン。
基本的に自己主張が少なくて意見する事もないけれど、その分、周囲や人を観察している。と言えばやり手に思えるけれど、そこから派生するのが、まぁ見て楽しむという趣味である。直接的に手を下す事はしないという腹黒さも見事に滲み出ていると言っても良い程だ。

「逃げられないように周囲を固められる前に動かないと……」
「気が付けば固められてたとか止めて下さいね。王太子ルートを潰さないで下さい」

私が決意を込めてそう言うと、帰ってきたアイビーから突っ込みが入った。王太子ルートに入る気もないわ!と言いたいが、本気でシャルルのルートは潰したい。常に怯えて過ごす事になりそうだ。

「迷子にならない。令嬢らしからぬ行動をしない……と言っても、チョコ作りに事業は……令嬢らしからぬ行動かもしれないわね……」

そう言ってカローラが項垂れるも、私だって項垂れたい。まさか興味を持って来るなんて誰が想像しただろう。
出会いのイベントだって、迷子になっていたヒロインを興味深そうに眺めている所から始まるんだよ。いっそ声かけて助けろよ!とか思うけれど、見ているだけなのがシャルルだ。明らかに令嬢らしくないヒロインを、ついつい観察しちゃうような奴なのだ。
そして、それから完全にヒロインのストーカーと化し、人に知られたくないドジなトコや恥ずかしい瞬間を含め全てその目に焼き付けた上に、タイミングを見計らって姿を現してヒロインの反応を見て楽しんでいる上に、常に見ていると匂わせ発言をしたりする変態なのだ。
平民の時に当たり前だった少し肌を見せる行為ひとつにしろ、言葉で攻めたりして、羞恥と恐怖で追い込み、最終的にはヒロインがあられもない姿を見せてしまう事になり、他に行く事が許されなくなった程に囲われたのだ。
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