【完結】こんな転生は嫌なので舞台から逃げようと思いますが、逃してもらえません!

かずきりり

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48.簿記に食いつかないで

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「それなら心当たりがあります」
「何か必要なのがあったら作るから言って!」

シャルルとジルベールは、そう言うと生クリームなるものの手配をしようと、王太子共々すぐに王都へ帰ると言い出した。心当たりがあるというシャルルの言葉に、思わず私とカローラは喜びに顔を見合わせてしまい、攻略対象者達が居なければ指を絡ませて踊り跳ねていただろう。
帰ってくれるという思いもあって安堵しているとシャルルがこちらを見ている事に気がつき、思わず視線を逸らしたくなったが、こちらに身体を向けたのでそれも出来なくなってしまった。
あぁああ……日本のように身振り手振りや空気なんかで気づきの力なんてありませ~ん!察する?無理!って言ってしまいたいが、そうなると淑女の嗜みもないのかと言われてしまう、この世界はとても面倒臭い。前世の自由さが恋しくなる。

「新しい発見は国の発展にも繋がるでしょう。事業に関して必要な事があれば、いつでもお伺いします」

そう言ってシャルルは私に向かって言った後、顔を寄せて私の耳元に近づくと

「そういえば、貴女がつけた帳簿は見た事のない方式で、しかも分かりやすいと聞きました。良ければ後日、記載方法を教えて頂ければと思います」

ギクゥッ!!

シャルルの言葉を聞いた瞬間、思わず飛び退いた。そりゃ見た事ないでしょうよ!簿記だし!簿記って言っても、そこまで細かくしてないけどね!日付も掛金も曖昧だからね!ただ資産とかは分かるようには記載しているし、人件費とかの費用もわかりやすくしたかったのだ。今後の雇用率を増やすという目的の為にも。

「……まだ実験段階ですから」
「そうですか、なら完成した暁には是非。私も使用してみたく思っておりますので」

引き攣りつつもそう返すと、宰相補佐という立場からだろうか、そんな事を言われた。どこかの本で習った……と言ったところで、そんな本は見た事ないし……だったら自己流ですと言ってしまうしかないのかと思ったけれど、それも危険な気がした。確実に目を付けられそうな、そんな予感。いや、もう色々と目を付けられているのかもしれない。

「とっとと、素早く、生クリームの為におかえりください。馬車の手配は済ませておりますので」

震え俯いているとアイビーが追い出すように皆を帰らせようと、そんな事を言い始め扉を開けた。生クリームを欲しがっていたカローラの為に少しでも早くと言った所だろうな、本当にブレない奴め!
玄関まで送れという王太子の言葉に嫌々ながらアイビーも従いつつ、部屋に残された私とカローラ、そしてポピーはノートの準備をしながらアイビーの帰りを待った。
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