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44.事業をしてみよう

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魔道具のおかげでチョコ作りが捗り、それによってショコラティエの育成をして、焼き菓子のトッピングや、チョコだけのスイーツを作ったりしている。まぁチョコの量的にトッピングとしてかけるのが無難にはなっているけれども。
十二歳の誕生日パーティでは、領民達でチョコパーティなんて事をしたり、カローラやセドリックが外に漏らさないようにしていても、見事に噂として各方面へ広がっていったようだ。
美味しいものを食べたかっただけなんだけどなー。
挙句カカオ豆の栽培にまで乗り出しそうとかカローラが言い出して苗木を送って来たりした。気候的に大丈夫なのかと言ったら、庭に苗木が植えられてるのを見たセドリックがカカオについて調べた上に温室のようなものを作ってきた。
この二人って本当に甘いもの好きだな!?私も人の事を言えないけどさ!!
そして、たまたまココアみたいなものが出来たので、そこから料理人達に試行錯誤してもらいココアパウダーのような物を完成させてケーキを作っていたりしたら……見事に父から呼び出しがかかった。

「リズ……事業としてチョコ作りをしてみるか?」
「やります!!!」

言いにくそうにした父だったが、私の元気良い返事で更に後ろに頭を仰け反らして、苦悶の表情を浮かべていた。

「くそ……娘には苦労かけないよう大切に大切に育てるつもりだったのに……」
「いや、十歳まで平民としてしっかり生活していたし。むしろ平民に戻りたいし」

どうやら大分娘馬鹿らしいけれど、そんな事を言ってもこっちは平民生活の方がまだ長い人生なんだ。私がそう返すと悲しみ溢れた顔をしていたが、本心です。もう野に放って下さい。
ジッと様子を観察されたが、私が本心から言っていると分かったのか、更に項垂れて父は話しだした。

「……国の歴史や貴族マナーよりも経営学や算術の方が得意だと聞く……」
「誰しも興味がある事の方が学ぶ意欲が出るというものです」
「……商売についてや領地運営についての本も読んでると聞いたが」
「平民として自活する為、必要かと思ってしっかり読んでます!」
「…………どこかの貴族子息と結婚して夫人として生きる道は……」
「何その地獄」

父は顔を覆って、机に突っ伏して身体を小さく震わせている。いや、女なら誰しも望むのがそんな未来という訳ではないからね?むしろ清々しいくらいに、攻略対象は変態しか居ないからね?そう考えたら、残りの貴族だって奇人変人でもおかしくないと思うの。この世界は狂ってると思うの。
ある意味で、愛を貫いた素晴らしい男爵という側面もあるけれど、貴族としての役目を果たす事が出来なかったヘタレという側面もある父のように。
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