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42.またやってきたのか

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「それより王都でチョコが噂になってるのってカローラのせいなんだって?」
「黒い食べ物でしょ?皆の反応がどうなのか見てみようと思ったの」

そもそもセドリックが来る原因となったのは、そのせいなんだけどって言うと、視線を逸らせながらもカローラが言いにくそうに言葉をポツリポツリと紡ぎ出した。
どうやら、焼き菓子しかないし、お茶会は苦痛だしと、せめて楽しい女子会みたいにならないかと披露してしまったと。そりゃ美味しいお菓子があるだけでテンションは上がるけどさ。

「カカオ豆からチョコを作る事がもっと出来れば、いっそショコラティエみたいな人を作ると良いかもしれない」
「量産の目処と、魔道具が必要なんではなくて?」
「「ショコラティエ?」」

私の言葉に疑問を抱いたアイビーとポピーに、チョコから色んなデザートやお菓子を作る人だと説明すると、それだ!と言われた。見事にそういう人が作れたら、セドリックはそちらに興味を抱くだろうと。

「性別は勿論男で探させてもらいますね」

ポピーが念のためにと言った様子でそう宣言してくれたので、私達は力強く頷いておいた。そこを心配するのなら、縄を引きちぎれる程、屈強な方の方が良いのでは?というアイビーの言葉に、思わず息をのんでしまったけれど。





「こちらを試してみて下さい!」

あれから大体一ヶ月後。まさかまた会うとは思わなかった……というか、セドリックの後ろには手を合わせて謝っているようなジェスチャーを繰り広げているのはカローラだ。
今回、セドリックを連れてきたのは紛れもないカローラなわけだけど……セドリックが対面しているのは私ではなく……

「ありがとうございます。では新しい道具を使って試す職人達を厳選するところから始めますね」

ポピーが置かれている魔道具を眺めながら、セドリックに感謝の意を伝えていた。

「どういう事よ」
「なんか憑いてきたんだって。渡したいものがあるからって」

何やらカローラとアイビーが馬でこちらに向かおうとした所に捕まって、スピードを出しても食らいついてきたらしい。そんな鍛えてるようには見えないんだけどね。あ、それを言ったらカローラもか。

「カローラ嬢はご令嬢でありながら素晴らしい運動神経なのですね」
「ヒッ」

いきなりセドリックに話題にされて、カローラの口から小さな悲鳴が漏れる。

「ジルベールが知ったら興味を持ちそうだ」
「カローラ嬢は王太子殿下の婚約者です」
「そうだった」

まさかの騎士団団長補佐の名前まで出てきて、アイビーは嫌そうな顔で王太子の名前を使って牽制していた。
まぁ……暴力大好き男とどエスなら、どエスがマシ……なのだろうか?
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