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39.セドリックはポピーに任せた

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「ふむ……」

セドリックはポピーの言葉を聞いて、顎に手を当てて考えている。
領民達が、領民達で、という複数形であれば確かに私一人への興味は薄れてくれるだろう。いや、あったとしても、この領地に居る男爵家の令嬢程度で済むかな!?
そして冷蔵庫がー冷凍庫がーと言っていたのは紛れもない私とカローラで、チョコの製作過程も含めてポピーなりにこちらの言葉で説明したのだろう。
むしろあれば助かる!アイスまではいかないにしろ、冷やして固まらせたものを食べる事が出来るのだ!プリンとかどうだろう!?

「それがあれば出来るんだな?」

つい他のレシピに思いを馳せていたら、そんな威圧するような低音ボイスが聞こえてきて、思わず顔をあげてしまった。そこには鋭い目線でこちらを見ているセドリックが居た。
青い髪に青い瞳って、ただでさえ若干冷たさが滲み出ているんですけどー!?その睨みつけるような視線やめてー!?

「……分かりません。領民達が、そう言っていただけで、試す事すら出来ていませんから」

半分嘘で半分本当。実際、前世での知識通りにやった所で今世も上手くいくとは思っていない。とりあえずやってみたいだけだったりもするのだ。原材料から作るって、本当に大変なんだーー!!

「なるほど、ここは領民一体となっているのか……領地ごと……というのも違うんだろうな……ルデウル男爵の人望か?」

何やらブツブツ言っているが、聞こえる単語に思わず背筋が凍る。うわーん、セドリックの設定が怖いー!

「製作過程を見せてもらう事は?正直、王都でも手に入れたいという者は多くて。唯一カローラ嬢のお茶会で出された事があるそうだけどね。」
「構いません。領民のほとんどが手伝っているようなものですから。……カローラ嬢の場合、従者達が馬を走らせて頑張っているのでしょう……」

セドリックはポピーに質問しつつ、私に挨拶をすると二人してチョコを作っている工場的な場所へ向かっていった。
後はポピーに任せれば大丈夫だと、緊張が一気に緩んで、ソファの背もたれに倒れこむとそのままズルズルと浅く座ってしまう。
確かにカローラの場合、出来上がったチョコを大量に持って帰ったりはしている。溶けたら溶けた時の事!と言いながら、馬に縛り付けていくのだ。
一応、馬の体温的な温度で溶けないようにと木の板は一枚噛ませているけれど……。それを出したんだろうなぁ……。

「カローラに聞かないと……」

そろそろこちらに来るという手紙があった為、色々とカローラに話す事が出来たなぁなんて思いつつ、お行儀が悪いかもしれないが、そのままソファで眠りについた。
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