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37.目の前に居る人物から逃げたい
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人生、本当に何が起こるか分からない。というのは、まさにこの事だと思う。
王都に戻ったカローラは、財力に物を言わせて砂糖や珈琲豆を大量に購入し、挙句にカカオ豆まで贈ってきた。そして有り余るオタク知識だろう、さとうきびからの砂糖の作り方、珈琲の色んな淹れ方、チョコレートの作り方を「詳しいとこまでは分からないけど!」という一言と共に簡単な走り書き程度のメモが同封されていた。
親切心というより自分の為だよね!?と思いながらも、私も食べたいのでメモを読んで実践してみたら……誰?チョコレートなんてものを生み出した人……神の手腕か……と思う程に疲労困憊になったのは言うまでもない。
洗って、炒って、薄皮向いて……すり潰す。何日もかけて、すり潰す。すり潰すだけでもう腕が死ぬ。
もうね、この程度で良いかな?なんて思ったら、ジャリジャリしててチョコじゃない!なんて叫んでしまった程だ。口当たりが悪すぎる。
空いた時間や休みの日があれば厨房で勤しんでいる私を、父や母も不思議に思い足を運んできた。あまりに本格的になった力仕事というお菓子作りに、貴族令嬢なのに!と怒られるかと思いきや……料理長が黙ってフルーツタルトやチョコレートを差し出すと顔を綻ばせて喜んだ。娘の手作りというのは両親にとって嬉しいものなんだな。なんて思っていると、そのまま口に入れた両親は……初めての味に驚き、このままお菓子作りを突き詰める事を許してくれた。
正直、止めて頂いても良かったんですが。
そしてチョコを作る時間と力仕事に料理長含む料理人達や、細かな作業に侍女や従者達に手伝ってもらいつつも……今や街中にも広がってしまった。砂糖を大量に使うけれど、バターを代用したり、苦味が好きな人はそのまま使ったり。牛乳に溶かし入れたりと用法は様々で、とても大人気商品になってしまったのだ。
言ってしまえばカローラも、大量に取りに来るし……ある意味、街で人手を確保している部分もあるのだけど……。
まぁ頻繁にカローラが来るというのは嬉しい気持ちもあるし、その分、砂糖を持ってきてくれたりするのは嬉しいのだけど……最近に至っては、頻度が増えたせいか、アイビーと二人馬で来るという暴挙に出ているのは如何なものかと。
貴女、侯爵令嬢ですよね!?と言いたくなる。豪華な馬車はどうした!!荷物用として後から追いかけてくるって何!?
なんて、ここ半年程の事が頭の中に駆け巡る。
えぇ、現実逃避です。思いっきり現実逃避です。
だって何故か今、私の目の前に攻略対象の一人で魔術師団団長のセドリック・グノーが居るのだから――。
王都に戻ったカローラは、財力に物を言わせて砂糖や珈琲豆を大量に購入し、挙句にカカオ豆まで贈ってきた。そして有り余るオタク知識だろう、さとうきびからの砂糖の作り方、珈琲の色んな淹れ方、チョコレートの作り方を「詳しいとこまでは分からないけど!」という一言と共に簡単な走り書き程度のメモが同封されていた。
親切心というより自分の為だよね!?と思いながらも、私も食べたいのでメモを読んで実践してみたら……誰?チョコレートなんてものを生み出した人……神の手腕か……と思う程に疲労困憊になったのは言うまでもない。
洗って、炒って、薄皮向いて……すり潰す。何日もかけて、すり潰す。すり潰すだけでもう腕が死ぬ。
もうね、この程度で良いかな?なんて思ったら、ジャリジャリしててチョコじゃない!なんて叫んでしまった程だ。口当たりが悪すぎる。
空いた時間や休みの日があれば厨房で勤しんでいる私を、父や母も不思議に思い足を運んできた。あまりに本格的になった力仕事というお菓子作りに、貴族令嬢なのに!と怒られるかと思いきや……料理長が黙ってフルーツタルトやチョコレートを差し出すと顔を綻ばせて喜んだ。娘の手作りというのは両親にとって嬉しいものなんだな。なんて思っていると、そのまま口に入れた両親は……初めての味に驚き、このままお菓子作りを突き詰める事を許してくれた。
正直、止めて頂いても良かったんですが。
そしてチョコを作る時間と力仕事に料理長含む料理人達や、細かな作業に侍女や従者達に手伝ってもらいつつも……今や街中にも広がってしまった。砂糖を大量に使うけれど、バターを代用したり、苦味が好きな人はそのまま使ったり。牛乳に溶かし入れたりと用法は様々で、とても大人気商品になってしまったのだ。
言ってしまえばカローラも、大量に取りに来るし……ある意味、街で人手を確保している部分もあるのだけど……。
まぁ頻繁にカローラが来るというのは嬉しい気持ちもあるし、その分、砂糖を持ってきてくれたりするのは嬉しいのだけど……最近に至っては、頻度が増えたせいか、アイビーと二人馬で来るという暴挙に出ているのは如何なものかと。
貴女、侯爵令嬢ですよね!?と言いたくなる。豪華な馬車はどうした!!荷物用として後から追いかけてくるって何!?
なんて、ここ半年程の事が頭の中に駆け巡る。
えぇ、現実逃避です。思いっきり現実逃避です。
だって何故か今、私の目の前に攻略対象の一人で魔術師団団長のセドリック・グノーが居るのだから――。
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