【完結】こんな転生は嫌なので舞台から逃げようと思いますが、逃してもらえません!

かずきりり

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33.変わらない部分もある

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一瞬、ポピーの手が止まり、息を飲んだのが分かったけれど、すぐに何事もなく私が落ち着くようにと背中を撫で始めた。驚くのも仕方ないと思うし、狼狽えても可笑しくないのに、すぐに自分を立て直しただろうポピーは凄いなって思う。

「……それで?リズはリズでしょ?」

私が何も言わなかったのを不安がってるのかと思ったのか、軽く抱きしめてきたかと思ったら、それが何?と言わんばかりの声をかけてきた。
緩んだ涙腺は、止まりかけた涙を更に流す。
ゆっくり……ゆっくりと、私は言葉にしていった。

前世の記憶を戻した時の事
ここがゲームの世界だと言う事

ゲームの世界、なんて言われて気分を害すかな、なんて言った後で後悔したけれど、ポピーはそれで?と何事もないように先を促してくれた。
その声は疑っているとか、信じてないとか、そういうのではなくて。ただただ受け入れてくれているような暖かい声で……。

ゲームのヒロインとなる私、悪役令嬢のカローラ。攻略対象と呼ばれる人が居る、乙女ゲームについての説明。
カローラにも記憶がある事、アイビーというゲーム外の協力者が居る事。
攻略対象者達の事。そして、カローラのゲームでの行く末や、私の行く末。

「ダメだよ……」

そう呟いてポピーは私を抱きしめる力を強めた。

「ダメだ!絶対!そんなのリズが幸せだと思えない!!絶対回避しよう!!」

信じてくれて、そして私の将来を守ってくれるような、その言葉に安心した。
泣いて泣いて、しゃべり続けて疲れていたのか、安堵の中、私の瞼がゆっくり重くなるのを感じながら、私はその安心感を手放したくなくて、言った。

「ポピーの態度に壁を感じて……従者だと理解してても悲しかったの……とても……辛かった」

ピクリとポピーの身体が揺れた気がしたけれど、久しぶりの人肌……貴族になって母にも抱きしめられた事がなくなった私は、その温かさと心地よさの中に身をゆだね、そのまま眠りについてしまった――。





翌朝になったのだろうか、暖かな陽の光で目が覚めると、どこかで工事のような音が響いている事に気がついた。
いつもの自室……とは違う、客室のような場所で目が覚めた私は周囲を見渡しているとタイミング良く侍女が入ってきて、朝の用意をしながら説明を受けて思い出す。
そうだった、ポピーが扉を破壊したんだった……。だから私は違う部屋に寝ていたのかと。
準備が終えた頃にポピーが入ってきて、今日の予定等を聞かされていると、最後に私の方へ寄ると、小声で私に聞こえる程度の声で言った言葉で、私の心は嬉しさと恥ずかしさで飛び上がった。

「二人の時だけは、いつものようにするよ、リズ」
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