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30.武力行使ですね
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カローラが王都へ帰ってしまい、私は少しどころか、かなり寂しさを感じてしまい……
――只今絶賛、引きこもり中――
流石に体調が悪いのかと放っておいてもらえたが、三日も部屋に閉じこもると話は全く別なわけで。
父が扉を叩く音や、母が何かしら声をかけているのは理解出来るけれど、扉を開ける気はない。というか鍵を閉めてもマスターキーで入られそうな気がしたので、木の棒をしっかりと紐で取っ手に固定して開かないようにしている程だ。
まだカローラが居れば、ふざけあって馬鹿な事を言い合って、心の喪失感を紛らわせる事が出来たけれど、今はそれもできない。むしろ専属従者ならば顔を合わせる回数が多いからこそ、毎回心が抉られたような痛みが走る。
どうして、なんて言わなくても理解できるし、納得もできる。それでも心は追いつかない。
今まで親しかった人物と離れる以上に、壁を作られて距離を取られた事は傷つくのだと初めて知った。それが例え理由ある事だとしても、この喪失感はなかなか消える事がない。
「お嬢様」
ノックの音と共にポピーの声が聞こえるけれど、それに対して返事をする気力もない。
引きこもった事が原因でポピーが呼ばれたそうだけれど、それは嬉しくもあり、しかしポピーにとって迷惑だったのでは、なんて事が延々頭の中で繰り返される。見せる顔がない。
「お嬢様?」
更に声がかけられた後、扉の向こうで何やら数人が喋っている声が聞こえて、布団を頭から被って音を遮断する。自己嫌悪も大概だ。もう本当に色々と嫌になる。
しばらくした後、ガタガタと扉を開けようとする音が響き、思わず顔をあげた。流石に扉を開けられないとは思うけれど、前世程しっかりしたバリケードでもないから心もとない。
「お嬢様、扉から離れていて下さいね?失礼いたします」
再度ポピーの声が聞こえたが、何を……と思考を始めた所で
ガッ!!!!!
「!!???」
何かで扉を叩くかしたのか、大きな音に思わず声にならない声がもれた。その後もガッガッと音がした……と思ったら、両開きの扉の隙間から鉈のような刃先が見える。
武力行使きたー!?
なんて思いながら目を見張ってると、どんどん隙間は大きくなり、とうとう取っ手に巻きつけていた木の板まで切断され、大きく扉が開け放たれた。
扉を破壊しただろう人物は私と同じ位の背丈で、鉈のような物を放り投げた後に急いでベッドの側まで来ると、私の顔を見た後に安堵したのだろう、素に戻っていた。
「リズ……良かった……無事だった……」
ポピーのその言葉に、私はとても胸が苦しくなって、小さな言葉でごめんなさいと呟くしか出来なかった。
――只今絶賛、引きこもり中――
流石に体調が悪いのかと放っておいてもらえたが、三日も部屋に閉じこもると話は全く別なわけで。
父が扉を叩く音や、母が何かしら声をかけているのは理解出来るけれど、扉を開ける気はない。というか鍵を閉めてもマスターキーで入られそうな気がしたので、木の棒をしっかりと紐で取っ手に固定して開かないようにしている程だ。
まだカローラが居れば、ふざけあって馬鹿な事を言い合って、心の喪失感を紛らわせる事が出来たけれど、今はそれもできない。むしろ専属従者ならば顔を合わせる回数が多いからこそ、毎回心が抉られたような痛みが走る。
どうして、なんて言わなくても理解できるし、納得もできる。それでも心は追いつかない。
今まで親しかった人物と離れる以上に、壁を作られて距離を取られた事は傷つくのだと初めて知った。それが例え理由ある事だとしても、この喪失感はなかなか消える事がない。
「お嬢様」
ノックの音と共にポピーの声が聞こえるけれど、それに対して返事をする気力もない。
引きこもった事が原因でポピーが呼ばれたそうだけれど、それは嬉しくもあり、しかしポピーにとって迷惑だったのでは、なんて事が延々頭の中で繰り返される。見せる顔がない。
「お嬢様?」
更に声がかけられた後、扉の向こうで何やら数人が喋っている声が聞こえて、布団を頭から被って音を遮断する。自己嫌悪も大概だ。もう本当に色々と嫌になる。
しばらくした後、ガタガタと扉を開けようとする音が響き、思わず顔をあげた。流石に扉を開けられないとは思うけれど、前世程しっかりしたバリケードでもないから心もとない。
「お嬢様、扉から離れていて下さいね?失礼いたします」
再度ポピーの声が聞こえたが、何を……と思考を始めた所で
ガッ!!!!!
「!!???」
何かで扉を叩くかしたのか、大きな音に思わず声にならない声がもれた。その後もガッガッと音がした……と思ったら、両開きの扉の隙間から鉈のような刃先が見える。
武力行使きたー!?
なんて思いながら目を見張ってると、どんどん隙間は大きくなり、とうとう取っ手に巻きつけていた木の板まで切断され、大きく扉が開け放たれた。
扉を破壊しただろう人物は私と同じ位の背丈で、鉈のような物を放り投げた後に急いでベッドの側まで来ると、私の顔を見た後に安堵したのだろう、素に戻っていた。
「リズ……良かった……無事だった……」
ポピーのその言葉に、私はとても胸が苦しくなって、小さな言葉でごめんなさいと呟くしか出来なかった。
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