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28.ポピーとの再会
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「ポピー!?」
少し垢抜けた感じがするも、赤茶の髪に茶色の瞳、そして地味な顔立ち。見慣れたその顔を私が間違う筈もない。
「ポピーと申します。よろしくお願いいたします、お嬢様」
綺麗に一礼するポピーに、驚きで目も口も開けたまま凝視してしまう。
ただの平民にすぎない彼が、礼の仕方や言葉使いなど知ってる筈がない。声も同じなのにドッペルゲンガーか二卵性双生児辺りを疑ってしまう。
アイビーも、無表情ながらに驚いているのか、いつもより目が少しだけ見開いているのが分かるし、カローラも扇で口元を覆っていても、目を見開いて驚いているのが分かった。
小さく、設定が変わった……?と呟いている声も聞こえたが、確かに私もそれなりに驚いている。ヒロインの隣に幼馴染どころか専属従者だって居なかったなと今更ながらに思い出したのだ。
「……悪いとは思ってるんだ。私の我儘でいきなり生活を変えてしまって……せめて仲が良かった者を一人でも近くに居たら少しでも違うのではないかと……もう引きこもらないで欲しい」
視線を下げ、少し俯きながら父がそんな事を言ってきた。我儘だって自覚してるんだ、と思う反面、それを言ってしまえば母もそうだろう。そして今の現状を受け入れない私もそうだ。
謝罪だけでなく、最大限自分に出来る事を考えてくれたのかと思うと、いかに自分が子どもなのかとさえ思えてきて、私まで俯いてしまう。
「今まで礼儀作法を学んでいてもらったんだ。物覚えは良くてね、やっと従者についてもらっても問題ないところまできたんだ。……リズが元気で育ってくれる事が今一番の望みなんだよ」
「……ありがとうございます」
そう言って頭を軽く撫でる父に、気恥ずかしくなる。確かに今世ではまだ十一歳だけれど、前世では二十歳を超えていたわけで、合わせたら三十はいくのだ。うっ……考えるのやめよ。年齢を足してはいけない!
良かったわね、と小さく呟くカローラの声が聞こえた。なんだかんだ王太子を押し付けてこようとはしているけれど、心根が優しいのは知ってる。カローラの心の底から祝っているような声にも少しくすぐったさを感じつつ、嬉しさを胸いっぱいに感じていた。でも……
「ポピー、店は良いの?お父様に無理矢理連行された?」
「リズ!!???」
嬉しいながらも気になって聞いてしまう。父は私の言葉に驚き声を張り上げたが、前科がある以上ありえない話ではない。カローラが笑うのを耐えたようだが、プッと吹き出した声は聞こえた。だけど
「望んで私はお嬢様の側に居る事に決めました」
そう真っ直ぐ言うポピーに、私は別人を見ているかのように胸が一瞬高鳴った。
少し垢抜けた感じがするも、赤茶の髪に茶色の瞳、そして地味な顔立ち。見慣れたその顔を私が間違う筈もない。
「ポピーと申します。よろしくお願いいたします、お嬢様」
綺麗に一礼するポピーに、驚きで目も口も開けたまま凝視してしまう。
ただの平民にすぎない彼が、礼の仕方や言葉使いなど知ってる筈がない。声も同じなのにドッペルゲンガーか二卵性双生児辺りを疑ってしまう。
アイビーも、無表情ながらに驚いているのか、いつもより目が少しだけ見開いているのが分かるし、カローラも扇で口元を覆っていても、目を見開いて驚いているのが分かった。
小さく、設定が変わった……?と呟いている声も聞こえたが、確かに私もそれなりに驚いている。ヒロインの隣に幼馴染どころか専属従者だって居なかったなと今更ながらに思い出したのだ。
「……悪いとは思ってるんだ。私の我儘でいきなり生活を変えてしまって……せめて仲が良かった者を一人でも近くに居たら少しでも違うのではないかと……もう引きこもらないで欲しい」
視線を下げ、少し俯きながら父がそんな事を言ってきた。我儘だって自覚してるんだ、と思う反面、それを言ってしまえば母もそうだろう。そして今の現状を受け入れない私もそうだ。
謝罪だけでなく、最大限自分に出来る事を考えてくれたのかと思うと、いかに自分が子どもなのかとさえ思えてきて、私まで俯いてしまう。
「今まで礼儀作法を学んでいてもらったんだ。物覚えは良くてね、やっと従者についてもらっても問題ないところまできたんだ。……リズが元気で育ってくれる事が今一番の望みなんだよ」
「……ありがとうございます」
そう言って頭を軽く撫でる父に、気恥ずかしくなる。確かに今世ではまだ十一歳だけれど、前世では二十歳を超えていたわけで、合わせたら三十はいくのだ。うっ……考えるのやめよ。年齢を足してはいけない!
良かったわね、と小さく呟くカローラの声が聞こえた。なんだかんだ王太子を押し付けてこようとはしているけれど、心根が優しいのは知ってる。カローラの心の底から祝っているような声にも少しくすぐったさを感じつつ、嬉しさを胸いっぱいに感じていた。でも……
「ポピー、店は良いの?お父様に無理矢理連行された?」
「リズ!!???」
嬉しいながらも気になって聞いてしまう。父は私の言葉に驚き声を張り上げたが、前科がある以上ありえない話ではない。カローラが笑うのを耐えたようだが、プッと吹き出した声は聞こえた。だけど
「望んで私はお嬢様の側に居る事に決めました」
そう真っ直ぐ言うポピーに、私は別人を見ているかのように胸が一瞬高鳴った。
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