【完結】こんな転生は嫌なので舞台から逃げようと思いますが、逃してもらえません!

かずきりり

文字の大きさ
上 下
22 / 112

22.王太子の設定は

しおりを挟む
「な……何を間違えたのかしら!?」
「王太子は設定通りなの!?」

落ち着いて思考が戻ってきた時には、そんな事をカローラと私は口にして視線を合わせていた。
思わず席を立って攻略を書いていたノートを持ってくると、それを悟っていたのか新しいハーブティの用意がされていた。

「そもそも殿下は私に興味がなくて、一応表向きお茶でもしようという連絡があるだけで、ずっと体調不良で断ってたのよ!?手紙もなければ、贈り物もない!エスコートが必要な時にだけ最低限ドレスを送ってくる程度だもの!殿下の好みに私は当てはまらないですし!あれだけリズを推したのに!」
「いや、推さないで!」

カローラがまくし立てるけれど、実際どういう状態だったのか描かれていないから分からない。けれど、ゲーム開始時は距離のある二人だったと思う。
多分、運営が描写カットしたんだろうな、とは思える程の内容手抜きゲーだ。
そもそも、フェリクス殿下は王太子として表向きの顔を保つために、令嬢に絡まれているヒロインを助けに入る事で出会う……が、そこで対等的な態度を崩さず、挙句に知識不足の為かマナーがなってない所もあり興味を持たれるのだ。
そう考えると今日はまだセーフだと思う。
興味を持った殿下がヒロインの事を調べ、平民としてのプライドというか気高さというか、権力に囚われない平等さや正義感と言った、愛されて育ち、貴族ならではの汚い物を知らないからこその、ただ無謀で無知なだけじゃねーか!という物珍しい、またとない所に面白さを見出して執着し、そして

――壊し、所有したくなる――

口撃だけなんて可愛いものじゃない。王太子という立場で、権力で、ありとあらゆる手段を使って、自分の物へと仕立て上げ、従順にしていく。
それこそ、身体を使っても……。
責め立て、屈辱に歪ませ、ひれ伏すように。自分に依存させる。
カローラのラストは人形のように心を歪ませられ……そして、ヒロインの時は……いわゆる快楽落ちとなる。

「……というより……」

カローラと二人、ノートを見ながら必死に情報を手繰り寄せ、必要あらば情報を書き出し、たまに悲鳴を上げたり、顔を手で覆ったりしていた中で、私は思わず口を開いた。
ある意味で、この性格は同じなんだと思う。あの表情を見ていると、どう考えても裏があるようにしか思えない。でもそれを向けていたのは……。

「……アイビーに対して興味を抱いているような気がする……」

そんな私の言葉に、一瞬空気が凍ったかのような気がしたけれど、あ……と呟いて納得したかのようなカローラと……
かかってこい返り討ちにしてやると言わんばかりの黒いオーラに邪悪な笑みを携えたアイビーを最後に、考えるのを放棄した私達は、お茶会を終了する事にした。
しおりを挟む
ツギクルバナー

あなたにおすすめの小説

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した

基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。 その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。 王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

悪役令嬢アンジェリカの最後の悪あがき

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【追放決定の悪役令嬢に転生したので、最後に悪あがきをしてみよう】 乙女ゲームのシナリオライターとして活躍していた私。ハードワークで意識を失い、次に目覚めた場所は自分のシナリオの乙女ゲームの世界の中。しかも悪役令嬢アンジェリカ・デーゼナーとして断罪されている真っ最中だった。そして下された罰は爵位を取られ、へき地への追放。けれど、ここは私の書き上げたシナリオのゲーム世界。なので作者として、最後の悪あがきをしてみることにした――。 ※他サイトでも投稿中

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

処理中です...