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21.フェリクス王太子殿下
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婚約者らしくない距離感のある会話……だけれど、療養については気になるのかと思っていると、カローラの作り笑顔が引きつっている。
あぁ、うん。もうこのまま王太子に執着されちゃって!なんて心の中で必死に願うが、次の言葉で疑問が飛び出す。
「会おうと思っても毎回寝込んでいると言うし……今回は療養だろ?結構、心配でね。それに俺が婚約者の事を何も理解していないと周囲に知られて色んな憶測が飛ぶと、お互いの為にもならない」
ん?
距離感ある婚約者では……ない?そしてカローラの事も考えている?
つい王太子を見つめてしまいそうになるが、視線はしっかりカップとソーサーに固定させる事を意識する。不敬があったりちょっとした失敗でこちらに興味を持たれたら、それこそ人生終了案件だ。
「カローラ様に変わり失礼致します。毎回寝込む程に病弱な為に、療養と言うのも何ら可笑しい事はないかと思いますが。お互いの為と言うのであれば、カローラ様が申し出ている婚約解消を受け入れるべきではございませんか?」
「そうもいかないのは理解しているよね?」
若干震えているカローラに変わり、アイビーが前に出て物申すと、それを面白そう眺めながら王太子が返した。確か政治バランスとか諸々を考えると、カローラ以外に居なかったってやつだよね。カローラも病弱を装って婚約を白紙にしようとはしてるのか……それ、筋肉ついたら終わりじゃない?それとも本当に王太子から自分の興味を削ごうとしたってやつかな。なんて、カローラの抵抗が伺える。
「王太子殿下と会うなんてカローラ様も緊張で具合が悪くなってきているようなので、そろそろ」
いやそれ不敬に入らないの!?
淡々と答えるアイビーに驚きを隠せないが、何とか息を飲んで視界に映らないように小さくなる。チラリと横目でカローラを見ると、震えている上に顔色も悪くなってきている。
王太子はアイビーを眺めながら、本当にお前は面白いな、なんて言いながらも席を立った。
「じゃあ俺はこれで失礼する」
そう言って退室して言った王太子だが、姿が見えなくなっても息を殺し続け、王太子が乗っただろう馬車の音が邸から離れて聞こえなくなってから、やっとカローラと二人息をついた。
その瞬間、よろめいたカローラをアイビーが支え、用意しておいただろうお茶をサっと前に置く辺りが流石だと思う。勿論私の分はない辺り、さすがアイビーと言いたくもなる。
フェリクス・モンタニエ第一王太子殿下
唯一まだマシとされる攻略対象で、偉そうだが表向きは公平で平等で、まさしく理想の王族……と思いきや、その内面は本当にただの俺様。
そして――どエス――
あぁ、うん。もうこのまま王太子に執着されちゃって!なんて心の中で必死に願うが、次の言葉で疑問が飛び出す。
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ん?
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「王太子殿下と会うなんてカローラ様も緊張で具合が悪くなってきているようなので、そろそろ」
いやそれ不敬に入らないの!?
淡々と答えるアイビーに驚きを隠せないが、何とか息を飲んで視界に映らないように小さくなる。チラリと横目でカローラを見ると、震えている上に顔色も悪くなってきている。
王太子はアイビーを眺めながら、本当にお前は面白いな、なんて言いながらも席を立った。
「じゃあ俺はこれで失礼する」
そう言って退室して言った王太子だが、姿が見えなくなっても息を殺し続け、王太子が乗っただろう馬車の音が邸から離れて聞こえなくなってから、やっとカローラと二人息をついた。
その瞬間、よろめいたカローラをアイビーが支え、用意しておいただろうお茶をサっと前に置く辺りが流石だと思う。勿論私の分はない辺り、さすがアイビーと言いたくもなる。
フェリクス・モンタニエ第一王太子殿下
唯一まだマシとされる攻略対象で、偉そうだが表向きは公平で平等で、まさしく理想の王族……と思いきや、その内面は本当にただの俺様。
そして――どエス――
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