【完結】こんな転生は嫌なので舞台から逃げようと思いますが、逃してもらえません!

かずきりり

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06.チクられました

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執事らしい服に身を包んだ銀髪に緑の目をした青年らしき人物は、冷たい雰囲気を醸し出しながら、無表情にこちらを見ている。

「アイビー!ありがとう!」

悪役令嬢であるカローラが笑顔でそう言うと、アイビーと呼ばれた執事の口角が少しだけ上がった気がした。というか……手筈通りに……?
穴が開く程にカローラへ視線を集中させる。その一挙一頭見逃さないように、そしてその先の説明を促すように。聞いちゃいけないと思いながらも、聞かなければという本能的な警告も強い。心臓がバクバクと音を立てて動いているのが分かる。
そんな私の視線に気がついたのか、カローラは花開くような美しい微笑みを私に向け、最悪な一言を突きつけた。

「ルデウル男爵に最愛の人が住んでる場所を教えたの」

はぁああああああ!!!!????
心の中では絶叫を放つも、口からは声が出ず、唇を動かす事も叶わなかった。息をするのがせいぜいだ。
あまりの衝撃に頭は思考を拒否しているかのように、言葉通り真っ白になった、というのが的確な表現だなとさえ、どこか冷静な部分で判断してしまう。
よし!と言わんばかりにガッツポーズをするカローラとは正反対に、私はどんどん血の気が引いていく思いだ。
父であるギル・ルデウル男爵は、ゲームの中ではそりゃ~ヒロインを溺愛していた。それほどまでに母であるロッテを愛していたのだろうな、身分って悲しいな、なんて思う程に凄まじく。
現在、妻を亡くし、子どもも居ないルデウル男爵が母の存在を知ったならば……当時のように力のない男爵令息ではなく、男爵として家督を継いだのであれば……

——考えられる事は一つだけ——

「なんて事を!?」

ようやく絞り出せた言葉はそれだった。

「だってリズには学園に入ってイベントをこなして貰わないと行けないもの!王太子殿下の!」
「自力で逃げろや現代日本人!!!」
「科学の力がなくても、人海戦術による軟禁から抜け出すのは無理よ。あれだけ発達してた世界の方が自由って恐ろしいわ」

あくまでカローラは王太子殿下との婚約破棄を狙っているのがよく分かる。その為に私をヒロインルートに陥れようとしてるのも分かる。分かるけど……

「……貴族ってそんな怖いの?」
「コルセットはキツイし、ドレスは重いし……この世界では色々と鍛えないと筋肉痛必須よ?」

ありがたいお言葉を貰うも、そんな世界に浸かりたくないという思いだけが膨れ上がる。
というか、もうルデウル男爵に伝えられたという事は……溺愛するあの男ならば行動が素早いに決まってる。
貴族であるカローラへの礼も忘れ、声にならない悲鳴を上げながら、私は家に向かって全速力で駆け出した。
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