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64.面倒ごとはもう要らない

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 フィンが二人を王太子に任せてからは、特に変わりない日々が続いていた。あの後にどうなったのか等の連絡を王太子の方からフィンに連絡する方法が欲しいとの事で、どうやら鳥型の魔獣を伝書鳩のように扱う事にしたようだ。しかも普通の伝書鳩みたいな外見に変化させて。

「シア、公爵から手紙がきたよ」
「……嫌な予感しかしない」

 どうやらそれを両親にも伝えたらしい。しかし両親的には私の手料理を食べたり、もふもふを楽しみたい欲もあり、手紙を送るよりかは直接遊びに来る事の方が多かったのだが……手紙にしたという辺り、緊急の要件にしか思えない。

「俺が先に開ける?」
「いや……大丈夫」

 いっその事、このまま燃やしたい欲もあるけれど、両親が急ぎ知らせたい事といえば、この後に起こる事にたいする注意喚起だろう。もし無い事に出来るのであれば、それはこの後に起こりえる事だ。
 緊張しながら手紙を開き文面を確認すると……思わずガックリと項垂れた。そんな私の様子に、首を傾げるフィンに手紙を渡すと……炭と化した。

「あ、つい……」
「いや……うん」

 フィンがそういう行動に出るのも無理はないだろう。

 ――王妃が動く。

 簡潔かつ簡単に書かれた一文からは本当に急いでいた様子が読み取れた。また第二王子との件か……それとも、聖獣であるフィンの事なのか。どちらにせよ面倒である事には変わりない。
 王家の動きを察して先に知らせてくれたとしても、公爵家に手紙は届いたか、遅くてもそろそろ届く事だろう。それをこちらへ通常通り送られてくるとしても数日猶予はあるわけだが……。

「猶予があっても面倒な事には変わりない……」

 溜息と共に零れた言葉。それにフィンは舌打ちで反応する。

「内容によって動き方は変わるね」

 そう言ってフィンは手紙を書くと、それを魔獣に公爵家へ届けるよう伝えた。

「何て書いたの?」
「一早く向こうの動きを知れたら、こちらで考える猶予がある。通常通りに送るのはダミーの手紙で問題ないでしょう。……隠す必要はないけど、時間を稼ぐ的な意味でも」

 確かに公爵家へ見張りがいると考えれば、念の為ダミー工作しても良いし、実際バレても問題ないという事か。確かに魔獣も外見がそのままであれば弓で撃ち落とされる可能性もあったからこそ変化させたのだろう。
 うん、ただのんびり料理して治療してるだけの私より本当に有能だと思う。おかしいな、私は前世でも人間だった筈で、きちんと学業もしていた筈なのに……。
 思わず首を傾げてしまいたくなるが、もうそこは聖獣になったからだろう、という一言で考えるのを止めた。……色々と心が折れそうで。
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