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58.牢から抜け出して
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「何なのよ!これ!納得いかないわ!」
牢……と言っても、貴族牢。整えられた部屋に閉じ込められているだけ、という状態でも、納得いかず叫んでいるのはリディア・ファルス伯爵令嬢だ。
「何よこれ……ヒロインをこんな扱い方して良いとでも思ってるの!?大体、外見年齢が違うなんて……気が付くわけないじゃない!」
ブツブツと呟くような声は、別の部屋に居る人物には聞こえないが、少なくともリディアが現状に対して不満を抱いている事だけは理解していた。その為、ドンッと壁を叩いて、隣の部屋に居るだろう人物へ合図を送る。
窓は使えない。扉の前には見張りが居る。武器は取り上げられているし、魔法が使えないような結界も張ってある。
しかし、自分達は身1つあれば十分抜け出せる事も知っている。あえて捕らわれているのはリディアを1人にしない為でもあったのだが……。
「あの悪役令嬢の……レティシアのせいだ!あいつが何かやらかしたから……シナリオから外れたのよ!」
リディアが、そんな叫びをあげた瞬間、壁の向こう側からドンドンッと2回叩く音が聞こえる。長年連れ添った者同士、ある程度の心は繋がっているのだ。
「行くか」
「……あぁ」
見張りに聞こえないよう。しかし隣の部屋には聞こえる程度の声でガルドがそう言えば、ロドルスからも声が返ってくる。
こんな所で捕らえられていても、リディアの不満は募るだけだ。ならば、再度森へ行って確認をした方が良いだろう。……それに、気にかかる事もある。
それはロドルスも同じだった。あの時の光景にどこか違和感を感じていたのだ。
守るべき弱い存在だと思っていたリディア。なのに……あの時の姿は何なのか。そして今も……ただヒステリックに叫ぶだけの女でしかない。
学園の時では成績を上げる為に努力して必死だったイメージしかないのに、今や王子妃教育すらマトモに受けない我儘な印象しかないのだ。
――本当にレティシア嬢が嫌がらせをしたのか――?
止めてと、泣き叫んでいたレティシア嬢。
森を、動物を、種族関係なく、生命を大切にするその姿と……問答無用で屠ろうとするリディアの命令。
考えても無駄だと言わんばかりに、二人は扉を蹴破り、見張りを昏倒させて抜け出した。いくら相手が武器を持っているとしても、これでも第二王子の側近に選ばれるだけの腕前だ。並大抵の相手には素手でも負ける気はしない。大人しく従わせたいなら、それこそ団長クラスを配置しろと言いたい。
「行くぞ」
「あぁ」
早く向かわなければ追ってが来るだろう。言葉も少なく、二人は馬を盗んで森へ向けて駆け出した。
考える暇さえないと言わんばかりに、一心不乱に。じゃないと、疑問を抱いてしまう。大切な守るべき相手だと決めたリディアに対して……忠誠を裏切る事にもなる。……間違っていたと自分で認めてしまう事になる。
本来であれば、プライドよりも国の為に……広い視野で見なければいけなかった盤面で……うつつをぬかした事を認めてしまう事になるという事は、二人も今更ながらよく理解していた――。
牢……と言っても、貴族牢。整えられた部屋に閉じ込められているだけ、という状態でも、納得いかず叫んでいるのはリディア・ファルス伯爵令嬢だ。
「何よこれ……ヒロインをこんな扱い方して良いとでも思ってるの!?大体、外見年齢が違うなんて……気が付くわけないじゃない!」
ブツブツと呟くような声は、別の部屋に居る人物には聞こえないが、少なくともリディアが現状に対して不満を抱いている事だけは理解していた。その為、ドンッと壁を叩いて、隣の部屋に居るだろう人物へ合図を送る。
窓は使えない。扉の前には見張りが居る。武器は取り上げられているし、魔法が使えないような結界も張ってある。
しかし、自分達は身1つあれば十分抜け出せる事も知っている。あえて捕らわれているのはリディアを1人にしない為でもあったのだが……。
「あの悪役令嬢の……レティシアのせいだ!あいつが何かやらかしたから……シナリオから外れたのよ!」
リディアが、そんな叫びをあげた瞬間、壁の向こう側からドンドンッと2回叩く音が聞こえる。長年連れ添った者同士、ある程度の心は繋がっているのだ。
「行くか」
「……あぁ」
見張りに聞こえないよう。しかし隣の部屋には聞こえる程度の声でガルドがそう言えば、ロドルスからも声が返ってくる。
こんな所で捕らえられていても、リディアの不満は募るだけだ。ならば、再度森へ行って確認をした方が良いだろう。……それに、気にかかる事もある。
それはロドルスも同じだった。あの時の光景にどこか違和感を感じていたのだ。
守るべき弱い存在だと思っていたリディア。なのに……あの時の姿は何なのか。そして今も……ただヒステリックに叫ぶだけの女でしかない。
学園の時では成績を上げる為に努力して必死だったイメージしかないのに、今や王子妃教育すらマトモに受けない我儘な印象しかないのだ。
――本当にレティシア嬢が嫌がらせをしたのか――?
止めてと、泣き叫んでいたレティシア嬢。
森を、動物を、種族関係なく、生命を大切にするその姿と……問答無用で屠ろうとするリディアの命令。
考えても無駄だと言わんばかりに、二人は扉を蹴破り、見張りを昏倒させて抜け出した。いくら相手が武器を持っているとしても、これでも第二王子の側近に選ばれるだけの腕前だ。並大抵の相手には素手でも負ける気はしない。大人しく従わせたいなら、それこそ団長クラスを配置しろと言いたい。
「行くぞ」
「あぁ」
早く向かわなければ追ってが来るだろう。言葉も少なく、二人は馬を盗んで森へ向けて駆け出した。
考える暇さえないと言わんばかりに、一心不乱に。じゃないと、疑問を抱いてしまう。大切な守るべき相手だと決めたリディアに対して……忠誠を裏切る事にもなる。……間違っていたと自分で認めてしまう事になる。
本来であれば、プライドよりも国の為に……広い視野で見なければいけなかった盤面で……うつつをぬかした事を認めてしまう事になるという事は、二人も今更ながらよく理解していた――。
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