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50.聖獣とは
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「王族ですら、もう聖獣の存在を信じる者は居ないだろうけど……僕は過去の書物を読み漁ったよ」
確かに、聖獣の事は家庭教師どころか学園でも習っていない。そしてゲームでも語られていない。所詮は聖獣という存在さえ居れば良いと作られたゲームでも、現実として存在するのであれば、ちゃんと理由があるだろう。私は王太子殿下の言葉を聞いた。
元々の土地は荒れ狂い、人が住めない状態だった。このままでは人類が滅びると危惧した聖獣達は、自身にある恩恵で土地を潤し、人が住めるようにした。
それだけではなく、人々に魔法を授け、快適に暮らせるようにした上で、各地に聖獣達は守護という形で配置についたのが始まりだとされている。
しかし、年月が経つと人々はそれを忘れ、感謝の気持ちをなくし、聖獣を利用しようと動き始める。それに聖獣が抵抗を見せると、勝手に恐れ排除に動き出し、いつしか聖獣の存在すら忘れられるようになってしまう。それは魔獣や獣人も同じだった。
魔獣達は人間の王と不可侵の条約を結んだが、それも年月が経つにつれ、忘れ去られていった。
むしろ忘れられるだけなら良かっただろう。魔獣達は狩られるようになり、素材にされ、奴隷にされた為、徐々に人間へ敵対していくようになった。
一度戦争のようなものが起こってしまい、人間側は惨敗した。結果、今度は結界等を使用するようになり、魔獣は悪いものと認識を変えて行った。魔獣達は、自分達の暮らしを邪魔されなければ良いと思っているようで、こちらから手出しをしない限りは何もないのが書物からも読み取れる。そして、獣人に対しても似たようなものだ。
「そして……歴代の王たちは、聖獣の存在を蔑ろにした」
そう言った王太子殿下の瞳は鋭く光ったようだった。
聖獣だけは大事にしろ。聖獣に祈れ。
歴代の王へ残す言葉として、そう紡がれていたらしいが、姿を見せなくなった聖獣に、いつしかそんなものは存在しないと祈る事を止めたと。
「僕は聖獣の存在を信じている。……恩人が、もしかしたら、と思う気持ちもある」
聖獣の証である赤い瞳。
見間違えとかでなければ、それは確かに聖獣だろう。そして、この世界に聖獣は確かに存在している事は知っている。
「……フィンが聖獣の身内だったら凄い事ですね」
「え」
「そうだね!親子って言っても信じられるくらい似てるよ!」
思わず言った言葉に、フィンが困ったかのように眉根を寄せたが、王太子殿下も私の言葉にのってきた。そこまで似てるなら、もうそれは攻略対象であり隠しキャラの聖獣だろうと思う。確かにフィンは幼いけれど、似ていると言えば似ているのか……。ゲームの聖獣は二十歳くらいだったと思う……あくまで外見年齢だから、実年齢は別だろう。ならば子どもが居てもおかしくないのか?そうなると子持ちが攻略対象者!?と、変な所へ思考が飛んでしまっていた。
確かに、聖獣の事は家庭教師どころか学園でも習っていない。そしてゲームでも語られていない。所詮は聖獣という存在さえ居れば良いと作られたゲームでも、現実として存在するのであれば、ちゃんと理由があるだろう。私は王太子殿下の言葉を聞いた。
元々の土地は荒れ狂い、人が住めない状態だった。このままでは人類が滅びると危惧した聖獣達は、自身にある恩恵で土地を潤し、人が住めるようにした。
それだけではなく、人々に魔法を授け、快適に暮らせるようにした上で、各地に聖獣達は守護という形で配置についたのが始まりだとされている。
しかし、年月が経つと人々はそれを忘れ、感謝の気持ちをなくし、聖獣を利用しようと動き始める。それに聖獣が抵抗を見せると、勝手に恐れ排除に動き出し、いつしか聖獣の存在すら忘れられるようになってしまう。それは魔獣や獣人も同じだった。
魔獣達は人間の王と不可侵の条約を結んだが、それも年月が経つにつれ、忘れ去られていった。
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