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44.謁見の場には
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「これは一体どういう事だ?」
謁見の場に響く、低く鋭い声に、集められた者は身体の震えを隠せなくなる。
壇上には国王夫妻と王太子が並び座っており、跪いているのは第二王子とリアレス、クロアドだ。
「リディア・ファルス伯爵令嬢は城から抜け出したと聞くが?」
国王の声に、事の重大さを理解しているリアレスとクロアドは顔面蒼白になるばかりだ。
「一体これから、どうしていくつもりだ」
あえて何も言わず、こちらに問いかけられ、リアレスとクロアドは返す言葉もない。王妃に至って扇で口元を隠してはいるが、眉間に寄せた皺を隠そうともしない。本来であれば表情を読み取らないようにする筈だが、言葉に出来ない分、表情に出して嫌悪感を見せつけているようだ。
「お言葉ですが!真に愛する者同士の方が手に手を取りやすく……」
「逃げ出しておるではないか。教育はどうなっている?」
馬鹿が。まだ事の重大さを理解していないのか。
クロアドは、そんな言葉が口から出そうになるのをグッと堪える。チラリとリアレスを見ると、呆れたような表情をしていた。
「リディなりに頑張ってくれております!」
「全く進んでないと報告に上がっておるが?」
国王陛下の冷たい目線に気が付く事もなく、ディアスは食って掛かっている。
「レティシア嬢であれば……」
「あんな性悪、王家に迎え入れるのには相応しくありません!」
「マナーが出来ていないものを受け入れる方が恥ずかしいでしょう。王族を何だと思っているのです!」
王妃陛下の零した言葉にも、ディアスは食ってかかる。実際、マナーが出来て知識もある方を迎え入れるべきではある。王族は国の顔なのだ。性悪だろうが国の為、民の為に動ける人物が最適なのは当然だ。
「陛下、ミゼラ公爵とレティシア嬢がお見えになりました」
ただ跪き続けるリアレスとクロアドは、陛下達がミゼラ公爵を呼びつけた理由をすぐに理解した。最低でも貴族をまとめ上げるにはミゼラ公爵と王族が仲たがいをしていてはいけない。しかし、それに反するかのようにディアスは驚きと怒りの表情に満ちた。
「何でシアが!」
「ディアス。……後はないぞ。自分で考えろ」
ディアスの声を遮り、国王はそれだけ言うと、王妃や王太子殿下と共に謁見の場を去っていく。全員、これからミゼラ公爵達と会うのだろう。
残されたのは、最後通告を受け、自分の過ちをただ悔やけ懺悔するかのように膝をついているリアレスとクロアド。そして……怒りの表情に燃えるディアス。
「何で……何で俺が……俺のせいじゃない……」
ブツブツ呟いているディアスに、自分の主はここまで愚かだったのかと言う思いと、止めきれなかった自分達の愚かさを思いながら、リアレスとクロアドも謁見の場を去っていく。
謁見の場に響く、低く鋭い声に、集められた者は身体の震えを隠せなくなる。
壇上には国王夫妻と王太子が並び座っており、跪いているのは第二王子とリアレス、クロアドだ。
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国王の声に、事の重大さを理解しているリアレスとクロアドは顔面蒼白になるばかりだ。
「一体これから、どうしていくつもりだ」
あえて何も言わず、こちらに問いかけられ、リアレスとクロアドは返す言葉もない。王妃に至って扇で口元を隠してはいるが、眉間に寄せた皺を隠そうともしない。本来であれば表情を読み取らないようにする筈だが、言葉に出来ない分、表情に出して嫌悪感を見せつけているようだ。
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「リディなりに頑張ってくれております!」
「全く進んでないと報告に上がっておるが?」
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「レティシア嬢であれば……」
「あんな性悪、王家に迎え入れるのには相応しくありません!」
「マナーが出来ていないものを受け入れる方が恥ずかしいでしょう。王族を何だと思っているのです!」
王妃陛下の零した言葉にも、ディアスは食ってかかる。実際、マナーが出来て知識もある方を迎え入れるべきではある。王族は国の顔なのだ。性悪だろうが国の為、民の為に動ける人物が最適なのは当然だ。
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「何で……何で俺が……俺のせいじゃない……」
ブツブツ呟いているディアスに、自分の主はここまで愚かだったのかと言う思いと、止めきれなかった自分達の愚かさを思いながら、リアレスとクロアドも謁見の場を去っていく。
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