【完結】婚約破棄された悪役令嬢は攻略対象のもふもふ従者に溺愛されます

かずきりり

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23.前世の繋がり

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 家に帰り、お茶を入れると向かい合って座る。ごまかしても仕方ない。きっとフィンなら……そんな信頼が私の中にある。かと言って、不安が全くないという事ではないが……。

「実は……婚約破棄された瞬間、前世の記憶が戻ったの」

 緊張からカップを持つ手が無意識に力む。一気に言葉を絞り出したが、顔は俯いたままフィンを見る事など出来ない。震えているのが自分でもわかる。

「どんな前世だったの?」

 サラッと何事もないかのように、フィンがそう問いかける。前世なんて事を言ったのに、今までと何も変わらない声色で、普段と同じような喋り方で。

「えっと……日本って国に住んでて……」

 どういった説明をすれば分かりやすいのだろう。そんな事を考えながら、言葉を紡ぐ。

「こことは全く違う世界でね。獣人なんてのは居なかったけれど、人間が動物を嫌うなんて事はなくて……動物園ってのもあってね……」

 だから、私は動物が好きだ。そして、自身は捨てられていたり、理由があって飼う事が出来なくなった犬猫の保護活動をしていた。必要があれば里親を探していたり……。仕事の合間に行っていたけれど、文明の利器とでも言おうか、インターネットという全世界に動画配信が出来るようになり、それによる収益で暮らしていけるようになった。保護活動の事、里親募集をしている子の事、最初はただ知って欲しい!家族になって下さい!という切実な願いだったのだけれど、これは私にとって、とてもありがたかった事だ。更に通販サイトに欲しいものリストを作れば、保護した子達のトイレや食べ物は何とかなった。

「真っ白でもふもふの大きな犬が居てね。その子が皆の世話をしてくれたりしていたの。あの子の協力があったから出来た事でもあったかな」
「平成から令和にかけた時代?」
「……え?」

 ついつい話に夢中となっていた所に、フィンからいきなりの言葉がかけられた。
 ……何で……年号を知ってるの……?
 訳が分からないと言った驚きの顔でフィンを見ていると、フィンは口元を緩めて笑った。

「その犬って、アメリカンエスキモードッグ?」
「っ!……どうして!」
「……本当に……?」

 どうして知っているのか。驚きを隠せない私にフィンは優しく……とても優しく微笑んだ……けれど、その両目からは大粒の涙が溢れ出している。

「会いたかった……ご主人様っ!」

 そう言ってフィンは私に抱き着いてきた。

「真冬です……!」
「えっ!?真冬!?」

 フィンの言葉に驚きを隠せない。けれど、真冬なのだとしたら……こんな偶然あるのだろうか。
 ただ断罪されるだけの悪役令嬢でしかない私だった筈なのに。

「会いたかった……」
「……私も」

 耳と尻尾を出して、抱き着きながらそう呟くフィンを私は優しく撫でながら、フィンが落ち着くのを待った。真冬と再会出来た。しかも獣人として……会話という意思疎通が出来る状態で。それは私にとっても、とても嬉しい事で……むしろ、ずっと傍に居てくれたなんて……前世でも今世でもありがとうという感謝の気持ちしかない。
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