18 / 88
18.村での生活
しおりを挟む
食事の後、エアロは隠れ里の皆が心配していると思うから戻ると言って、森の奥深くへ走って行った。その脚力はやはりサーバルキャットだな、と思える程に速く、その姿が見えなくなるまで見送った。
私達は、翌朝には予定通り村へ行き、そこで空き家を借り、討伐や採取依頼をしながら細々と生活していたりするのだが……。
「よっ!シア!フィン!」
「エアロ!また来たの!?」
変わった事と言えば、たまに森の中で薬草とか探しているとエアロが現れる事だ。
「ここに来るまでの間、危険もあるだろう」
「まぁ、そうだけど。狩りのついでってのもあるし、人間と知り合いってのも何か嬉しくて」
エアロはそう言って牙が見える程に笑った。
「……知り合い、ですからね」
「こえぇよ、フィン」
睨みつけるようなフィンの眼差しにも慣れたのか、エアロもエアロで言い返している。知り合いって何か遠い存在な気がするんだけど……。
「友達ではないのね……」
思わず私がそう口にしてしまえば、二人は勢いよく私の方を向いた。フィンは驚いたような、だけど愕然とした表情をして。エアロは驚きつつも顔面蒼白な顔をして。
「ごめんなさい。そんなに嫌だとは……」
そこまで拒絶されるのかと、私もショックを受けて俯いてしまう。フィンも人間が獣人と友達になるなんてあり得ないと思っているのだろうか。
「嫌じゃねぇよ!?」
「私も獣人のお友達欲しかったんだけど……というか、友達いないし」
落ち込む私を見て、二人は慌てる。よく考えれば私に友達は居ない。記憶が戻る前の事も覚えているが、家同士の付き合いで……と言った感じで、本音を言えるような友達は居なかった。全てが上辺だけ。
「フィンは!?」
そんな私に、慌てたようにエアロが言う。その質問にフィンがエアロを威圧したが……。
「フィンは友達以上だもの」
私は当たり前の言葉を返す。驚いたようにフィンがこちらを向いたが、何を驚く事があるのだろうか。
「そうね……家族のような?」
フィンは私にとって一番近い存在で、本音だけでなく、ありのままの自分をそのまま曝け出しても良いような存在なのだ。大事で大切で、かけがえのない存在。
そんな思いを込めてそう伝えれば、エアロは吹き出し。フィンはどことなく複雑そうな顔をする。
仕えている主人に家族のようなものと言われてしまえば、そうなのだろうか。それはそれでこちらとしても多少ショックを覚えてしまう。
「エアロ兄ちゃん!見つけた!」
いきなり森の中から、そんな声が聞こえた。驚いて振り返ると、フィンと年齢的には変わらないか、それより下の子が三人程居た。
「お前ら、どうしてここに!?危ないだろ!」
「エアロ兄ちゃんの言ってた人間に会って見たくて!」
一体、何を言っていたのだろうか。キラキラした瞳でこちらを見る子ども達。というか私としては、何の獣人なのか知りたくて、思わずこちらもジーっと見つめてしまっていると、フィンとエアロの溜息が聞こえた。
私達は、翌朝には予定通り村へ行き、そこで空き家を借り、討伐や採取依頼をしながら細々と生活していたりするのだが……。
「よっ!シア!フィン!」
「エアロ!また来たの!?」
変わった事と言えば、たまに森の中で薬草とか探しているとエアロが現れる事だ。
「ここに来るまでの間、危険もあるだろう」
「まぁ、そうだけど。狩りのついでってのもあるし、人間と知り合いってのも何か嬉しくて」
エアロはそう言って牙が見える程に笑った。
「……知り合い、ですからね」
「こえぇよ、フィン」
睨みつけるようなフィンの眼差しにも慣れたのか、エアロもエアロで言い返している。知り合いって何か遠い存在な気がするんだけど……。
「友達ではないのね……」
思わず私がそう口にしてしまえば、二人は勢いよく私の方を向いた。フィンは驚いたような、だけど愕然とした表情をして。エアロは驚きつつも顔面蒼白な顔をして。
「ごめんなさい。そんなに嫌だとは……」
そこまで拒絶されるのかと、私もショックを受けて俯いてしまう。フィンも人間が獣人と友達になるなんてあり得ないと思っているのだろうか。
「嫌じゃねぇよ!?」
「私も獣人のお友達欲しかったんだけど……というか、友達いないし」
落ち込む私を見て、二人は慌てる。よく考えれば私に友達は居ない。記憶が戻る前の事も覚えているが、家同士の付き合いで……と言った感じで、本音を言えるような友達は居なかった。全てが上辺だけ。
「フィンは!?」
そんな私に、慌てたようにエアロが言う。その質問にフィンがエアロを威圧したが……。
「フィンは友達以上だもの」
私は当たり前の言葉を返す。驚いたようにフィンがこちらを向いたが、何を驚く事があるのだろうか。
「そうね……家族のような?」
フィンは私にとって一番近い存在で、本音だけでなく、ありのままの自分をそのまま曝け出しても良いような存在なのだ。大事で大切で、かけがえのない存在。
そんな思いを込めてそう伝えれば、エアロは吹き出し。フィンはどことなく複雑そうな顔をする。
仕えている主人に家族のようなものと言われてしまえば、そうなのだろうか。それはそれでこちらとしても多少ショックを覚えてしまう。
「エアロ兄ちゃん!見つけた!」
いきなり森の中から、そんな声が聞こえた。驚いて振り返ると、フィンと年齢的には変わらないか、それより下の子が三人程居た。
「お前ら、どうしてここに!?危ないだろ!」
「エアロ兄ちゃんの言ってた人間に会って見たくて!」
一体、何を言っていたのだろうか。キラキラした瞳でこちらを見る子ども達。というか私としては、何の獣人なのか知りたくて、思わずこちらもジーっと見つめてしまっていると、フィンとエアロの溜息が聞こえた。
15
お気に入りに追加
740
あなたにおすすめの小説
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります
秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。
そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。
「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」
聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。
婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます
今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。
しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。
王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。
そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。
一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。
※「小説家になろう」「カクヨム」から転載
※3/8~ 改稿中
精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた
アイイロモンペ
ファンタジー
2020.9.6.完結いたしました。
2020.9.28. 追補を入れました。
2021.4. 2. 追補を追加しました。
人が精霊と袂を分かった世界。
魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。
幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。
ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。
人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。
そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。
オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです
ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」
宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。
聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。
しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。
冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。
私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!
近藤アリス
恋愛
私生児聖女のコルネリアは、敵国に二束三文で売られて嫁ぐことに。
「悪名高い国王のヴァルター様は私好みだし、みんな優しいし、ご飯美味しいし。あれ?この国最高ですわ!」
声を失った儚げ見た目のコルネリアが、勘違いされたり、幸せになったりする話。
※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です!
※「カクヨム」にも掲載しています。
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる