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16.前世で行っていたこと
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「いや、危険だしダメだから!」
「危険?」
「シア。獣人は人間に敵意を持ってる」
彼は私の申し出を断った。その理由をフィンが教えてくれた。確かに、私達人間が獣人に対して酷い扱いをしている以上、彼らにとって人間という括りで敵としてみなされていても当たり前だろう。理解できる、けど、私的にそれを無視する事は出来ない。
前世の記憶が私の感情を支配する。
私は、前世では猫や犬の保護活動をしていた。しかし仕事をしながらの保護活動は難しいものもあった。そこで私は動画を撮ってインターネットに流す事で収益を得ていたのだ。
保護活動の宣伝にもなり、里親募集も出来、更に収入も得られる!たまに品物で寄付される事もあり、仕事をしなくても生活出来るようになったらなったで、私は更に活動範囲を広めていたくらいだ。
一番可愛がっていたのは、最初に拾って飼ってきた白いアメリカネスキモードッグだ。真冬と名付けて、いつも一緒に行動していた。飼い主を喜ばせる事が大好きで、友好的だけれど警戒心が強く縄張り意識も強い為、大声でよく吠えると聞いたが、真冬は吠える事がなかった。それどころか、他の保護した犬猫に対して家族のような情を向けてくれていたのだ。
だからこそ、私は保護活動が出来たのだ。そして、そんな私だからこそ……。
「それでも、放っておけない」
「シア……」
ギュっと、フィンの手を掴んで言う。
「獣人のフィンが居たら警戒心も緩まないかな?せめて手当だけでも出来ないかな?」
私の言葉に、獣人の彼は目を見開き、フィンはどこか寂しそうで懐かしげな表情をした。
知った命を散らせたくない。というか、私は本当に動物が好きで。見て見ぬふりが出来なくて。新しい家族の元で幸せに暮らしているのを見ると安心出来て、人間と動物の心の絆というものを確信していたのだ。
「……森の奥深くに、隠れ里のようなものがあるんだ……」
ポツリと、獣人の彼は言葉を紡いだ。
この森は確かに広い。そして冒険者ですら奥深くにまでは足を踏み入れない。自分は逃げまどって、こんな所まで来てしまったけれど、と彼は言った。確かに、方向を1つ間違うだけで死んでしまう程に広い森ならば、隠れるのもありだろう。 獣人は人間よりも方向感覚や五感も良いから、人間には分からない何かで迷う事なく生活が出来るという事だろうか。
「案内して!」
「シア!さすがにダメだから!」
「俺も反対だ……恩人が死ぬ所を見たくない」
「シアは殺させないよ?」
死ぬ事が確定する程、敵視されてるんですかと、思わず背中に汗が流れる。フィンが守ってくれるようだけれど、そうなるとフィンを危険に晒してしまう事になるわけで……それだけは絶対に避けたい私は、他に方法がないか考えた。
「危険?」
「シア。獣人は人間に敵意を持ってる」
彼は私の申し出を断った。その理由をフィンが教えてくれた。確かに、私達人間が獣人に対して酷い扱いをしている以上、彼らにとって人間という括りで敵としてみなされていても当たり前だろう。理解できる、けど、私的にそれを無視する事は出来ない。
前世の記憶が私の感情を支配する。
私は、前世では猫や犬の保護活動をしていた。しかし仕事をしながらの保護活動は難しいものもあった。そこで私は動画を撮ってインターネットに流す事で収益を得ていたのだ。
保護活動の宣伝にもなり、里親募集も出来、更に収入も得られる!たまに品物で寄付される事もあり、仕事をしなくても生活出来るようになったらなったで、私は更に活動範囲を広めていたくらいだ。
一番可愛がっていたのは、最初に拾って飼ってきた白いアメリカネスキモードッグだ。真冬と名付けて、いつも一緒に行動していた。飼い主を喜ばせる事が大好きで、友好的だけれど警戒心が強く縄張り意識も強い為、大声でよく吠えると聞いたが、真冬は吠える事がなかった。それどころか、他の保護した犬猫に対して家族のような情を向けてくれていたのだ。
だからこそ、私は保護活動が出来たのだ。そして、そんな私だからこそ……。
「それでも、放っておけない」
「シア……」
ギュっと、フィンの手を掴んで言う。
「獣人のフィンが居たら警戒心も緩まないかな?せめて手当だけでも出来ないかな?」
私の言葉に、獣人の彼は目を見開き、フィンはどこか寂しそうで懐かしげな表情をした。
知った命を散らせたくない。というか、私は本当に動物が好きで。見て見ぬふりが出来なくて。新しい家族の元で幸せに暮らしているのを見ると安心出来て、人間と動物の心の絆というものを確信していたのだ。
「……森の奥深くに、隠れ里のようなものがあるんだ……」
ポツリと、獣人の彼は言葉を紡いだ。
この森は確かに広い。そして冒険者ですら奥深くにまでは足を踏み入れない。自分は逃げまどって、こんな所まで来てしまったけれど、と彼は言った。確かに、方向を1つ間違うだけで死んでしまう程に広い森ならば、隠れるのもありだろう。 獣人は人間よりも方向感覚や五感も良いから、人間には分からない何かで迷う事なく生活が出来るという事だろうか。
「案内して!」
「シア!さすがにダメだから!」
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「シアは殺させないよ?」
死ぬ事が確定する程、敵視されてるんですかと、思わず背中に汗が流れる。フィンが守ってくれるようだけれど、そうなるとフィンを危険に晒してしまう事になるわけで……それだけは絶対に避けたい私は、他に方法がないか考えた。
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