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15.隠れ住む

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「……大変申し訳ございませんでした」
「いや……俺こそ……?」

 落ち着いた頃に、お互い謝りあう……というか、獣人の彼は疑問形ではある。それはフィンの鋭く冷たい目線のせいかもしれないけれど。というか、確実にそうだろう。フィンの方をチラチラ様子を伺っている事から分かる。

「で、何でこんな場所で獣化していたんですか?紛らわしい」

 最後の一文を特に底辺から響く冷たい声で言い放つフィンに、ビクリと身体を一瞬震わせてから、ヤケになったように顔をそっぽ向けて獣人の彼は口を開く。

「人間に見つかると色々面倒じゃねーか。怪我して動けなかったし」
「そうね、あれだけの傷だと……」
「そもそも!獣化した獣人かもしれねーのに、よく手当したな……?」

 怪訝そうな目で彼はそう私に言うが、私は何の事だと思ってキョトンとした顔をしてしまう。その表情を見た彼は、ため息をつくと頭を抱えた。

「……まぁ、獣人を連れてるくらいだしな……隷属の契約もしないで」
「あ」

 そこで私は、獣人の扱いがどういったものかという事を思い出した。ずっとフィンと一緒に居たし、前世の記憶の影響か、私自身そういった差別意識が全くなかった為に、すっかり忘れてしまっていた。

「獣人は人間から隠れ住んでると聞いてるが?」

 話題をそらすかのようにフィンが問いかけてくれた。その言葉に、彼の目は怒りに染まったように鋭くなった。

「そうだよ!人間に見つかったら、どんな目にあうか!……でも、生きるためには狩りが必要だ……」

 人間を心の底から嫌い、軽蔑しているのだろう事が分かる。しかし、勢いをなくした後半の言葉から、いくら人間より優れている部分があったとしても、隠れての生活は大変なのかもしれない。
 チラリとこちらを見た後、彼は聞き伝えられてる人間や、知ってる人間とは違うようだけど……と言って、視線を彷徨わせている。私に対してどう接して良いのかも分からず戸惑っているのだろう。

「狩りの最中に怪我を?」
「そうだよ……動ける奴が狩りをするんだ」

 ならば、動けない人もそれなりに多いのではないだろうか。足を怪我してしまえば、それだけで戦力外になってしまうし、腕が動かなくなってもそうだ。というか……何というか……。

「大変じゃない!薬草はあるの!?治療はどうしてるの!?」

 思わず前のめりになって聞く私の勢いに、彼はのけぞる。隠れ住んでいるというのならば、治療設備が整っているとも言い難いのではないだろうか。

「薬草なんてないし、基本自然治癒というか自己治癒……」
「治療に行くわ!」

 完全に野生として生活している人達の自己免疫力に頼るのを無くしてはいけないのかもしれないけれど、手術みたいな高位技術ではなく薬草手当や生活魔法の回復程度ならば、そこまで邪魔にはならないだろう。
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