【完結】婚約破棄された悪役令嬢は攻略対象のもふもふ従者に溺愛されます

かずきりり

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07.貴族令嬢の生活は嫌だ

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「お願いがあるのですが……」
「どうした?」

 ゴクリと息を呑み、ゆっくり自分の想いを伝える。記憶が戻ったからこそ、思う事でもある。

「すでに公爵家と釣り合う家に婚約者の居ない者は居ないでしょう。傷物令嬢である事には変わりないですが、私は修道院に入りたくはありません」
「傷物令嬢だなんてっ!」

 私の言葉にお母様はそう言うが、お父様は唇を噛みしめた。実際、この先に縁談は難しいという事は理解しているのだろう。

「なので、市井に降りて生活しようと思います」
「何を言っているの!?」
「平民になるつもりか!?」

 両親は驚きのあまり、ガタンと椅子を鳴らして立ち上がった。

「確かに、この機会で婚約の話は無くそうとは思うが……」
「絶好の機会ですもの……しかし……」

 両親的にも、あの王子とこれから先というのは考えていない事は嬉しい。しかし貴族令嬢としては大問題だ。更に平民として暮らすなんて公爵令嬢で更に元とは言え王族と婚約していた者には難しいという考えがあるのだろう。
 当たり前だと思う。今まで全て人に頼って生きていたようなものだ。それも見栄というのもあるが、経済を回すためというのもある。人を雇って、働き口を増やすのだ。だから自分で自分の事をしてしまえば、その人の仕事を奪ってしまう事にもなる、なんとも難しい世界。
 むしろそれが私としては嫌なのだ。前世とはあまりにかけ離れた価値観、世界。いくら今までの記憶があると言っても、違和感というか息苦しさは残るだろう。一般モブ子には厳しさしかない。あと貴族の面倒な言い回しや嫌味、好奇の目に噂話。メンタルがた落ちの病み子になる未来が目の前に広がる、というか、そんな未来しか見えない。療養したところで、面倒臭さしかないだろうと思うと、療養すら気が滅入るのだ。

「……とりあえず、今後の事はまた話し合うとして、今はゆっくり休みなさい」
「そうよ、今は冷静でいられないだけかもしれないわ」
「家族の時間を作る為にも、とっとと今回の追求責任を陛下にしてこよう」

 混乱していると思われて、執事を呼ばれて部屋へ連れていかれる。お父様はこれから王城へ行くつもりなのだろうか、先ぶれを出しているのが聞こえた。
 そう言われても私は混乱しているわけではないと思うのだけど……と思いながら、やはり今までの記憶があると言っても、湯あみを誰かにしてもらう事に違和感や羞恥心と言った、どうしようもない感情が沸き上がってきた。マッサージとかも気持ち良いし、洗い方も丁寧だけど、何て言うのだろう……自分でやらせて!と、どうしても思ってしまうのだ。
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