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第三章
26.後方へと逃げる
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素早く、しかし美しく、軽やかに、まるで舞うように真は動く。
敵を鞘打ちで昏倒させて気を失わせているだけで、誰一人の命を奪っても居ないのに……まるで戦場に舞い降りた神のようではないか。
「後方へ下がれ!」
思わず見とれてしまっていた私に、真は声を荒げた。
そうだ、ボーっとしている場合じゃない。
私はキィ達と一緒にと思って後方へ振り返ると、すぐ側でギィン! と金属の甲高い音が鳴った。
「真!」
「油断するな!」
そこには敵の剣を受ける真が居て、相手の腹へと蹴りを入れて遠ざけた瞬間、更に鳩尾へと鞘を叩き込んで意識を刈り取った。
すぐ側まで敵が近づいている事に気が付かなかった!
「ミズキ様!」
他の敵と戦っていたのか、少し遅れてデイルが駆け付けてきてくれて、私の腕を取るとキィの方へと向かった。
その後ろから周囲を警戒するように真も着いてきてくれた。
真が無事で良かったけれど……私は足手まといでしかないのではないか。
皆の命を無駄に刈り取るだけではないのだろうか。
情けなさで涙が出そうになる。
殺したくない。けれど殺されたくない。
こんな甘い事なんて言っていられないのは分かっている。頭では理解している。だけど……全くもって感情が追い付かない。そう簡単に全てを割り切れない。
「キィ!」
すぐ近くに居たから声は聞こえていたのだろう。ウィルがキィの腕を掴んで、無理やり立たせて走る。
「……あ……」
少しは意識が戻ってきているのだろうキィは、周囲を見て泣きそうになるのを、頭を振って耐えた。
周りは見ないように……ただ皆で固まって、敵を倒しながら琴子の元へと向かう。
逃げている……? そうだ、逃げているだ。
だけれど……でも? どうして……こんな目に。
ぐるぐると思考が回る。自責と他責の思考が交互に襲ってきて、最早自分でもわけがわからなくなる。
――怖い!
敵と味方が入り交じり、すぐ側で殺し合いが起こっていて、いつ自分に刃が届くのかも分からない。
……一瞬先に自分が死んでいるかもしれない。
生と死が入り乱れる。戦場とは、そんな場所なのか。
デイルやウィルが敵を切り倒しながら少しずつ後退する。目の前に何度も飛び散る血を見ながら。
「きゃっ」
足がもつれたのか、キィが思いっきりこけて倒れ込んだ瞬間を、敵が見逃すわけない。
「キィ!」
デイルやウィルも、今は他の敵を牽制している中で、敵兵の剣がキィを捉えて振り下ろされる。
「キィー!!」
「あ……」
キィは恐怖に呑み込まれたのか、ただ振り下ろされる剣を眺めて震えるだけで……。
私もその先を見たくなくて、強く目を瞑った。
敵を鞘打ちで昏倒させて気を失わせているだけで、誰一人の命を奪っても居ないのに……まるで戦場に舞い降りた神のようではないか。
「後方へ下がれ!」
思わず見とれてしまっていた私に、真は声を荒げた。
そうだ、ボーっとしている場合じゃない。
私はキィ達と一緒にと思って後方へ振り返ると、すぐ側でギィン! と金属の甲高い音が鳴った。
「真!」
「油断するな!」
そこには敵の剣を受ける真が居て、相手の腹へと蹴りを入れて遠ざけた瞬間、更に鳩尾へと鞘を叩き込んで意識を刈り取った。
すぐ側まで敵が近づいている事に気が付かなかった!
「ミズキ様!」
他の敵と戦っていたのか、少し遅れてデイルが駆け付けてきてくれて、私の腕を取るとキィの方へと向かった。
その後ろから周囲を警戒するように真も着いてきてくれた。
真が無事で良かったけれど……私は足手まといでしかないのではないか。
皆の命を無駄に刈り取るだけではないのだろうか。
情けなさで涙が出そうになる。
殺したくない。けれど殺されたくない。
こんな甘い事なんて言っていられないのは分かっている。頭では理解している。だけど……全くもって感情が追い付かない。そう簡単に全てを割り切れない。
「キィ!」
すぐ近くに居たから声は聞こえていたのだろう。ウィルがキィの腕を掴んで、無理やり立たせて走る。
「……あ……」
少しは意識が戻ってきているのだろうキィは、周囲を見て泣きそうになるのを、頭を振って耐えた。
周りは見ないように……ただ皆で固まって、敵を倒しながら琴子の元へと向かう。
逃げている……? そうだ、逃げているだ。
だけれど……でも? どうして……こんな目に。
ぐるぐると思考が回る。自責と他責の思考が交互に襲ってきて、最早自分でもわけがわからなくなる。
――怖い!
敵と味方が入り交じり、すぐ側で殺し合いが起こっていて、いつ自分に刃が届くのかも分からない。
……一瞬先に自分が死んでいるかもしれない。
生と死が入り乱れる。戦場とは、そんな場所なのか。
デイルやウィルが敵を切り倒しながら少しずつ後退する。目の前に何度も飛び散る血を見ながら。
「きゃっ」
足がもつれたのか、キィが思いっきりこけて倒れ込んだ瞬間を、敵が見逃すわけない。
「キィ!」
デイルやウィルも、今は他の敵を牽制している中で、敵兵の剣がキィを捉えて振り下ろされる。
「キィー!!」
「あ……」
キィは恐怖に呑み込まれたのか、ただ振り下ろされる剣を眺めて震えるだけで……。
私もその先を見たくなくて、強く目を瞑った。
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