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第二章
20.枢機卿に助けを求め
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「こ……んな……」
擦り傷や切り傷、捻挫程度の治療なら少しは練習してきているけれど……骨折や抉られたような傷を治療した事なんてない。
……治せる自信なんてない。
キィは未だに嗚咽を繰り返して、まともに琴子の姿を見る事が出来そうになく、やるなら私しか居ないのだけれど身体が動かない。
――怖い。
何とかしなきゃ。
助けなきゃ。
そう思っているのに、身体の震えが止まってくれない。
命が消えそうになっている……こんな大けがをしている人を目のした事なんて今までなかった。
「うっ」
「瑞希様!」
傷口から白い骨のようなものが見えて、私も口を押えて、嗚咽をこらえると、デイルが背を撫でてくれた。
「木を!」
「まず止血をしよう」
アンドリューと真が素早く琴子の手当に入る。
アンドリューはともかく、同じ世界から召喚されてきた真は慣れていない光景なのに、冷静に対処出来ている。
私も琴子を助けないと!
そう思って動き出したいのに、むせ返るような血の匂いが鼻につき、またも嗚咽が出そうになる。
「キィ、神殿まで気を保て!」
「急いで神殿へと戻り、枢機卿と共に治療して下さい」
ウィルとデイルの言葉に、私とキィはハッとした。
私だけじゃ……私達だけでは、やった事ないと自信がなかったけれども、枢機卿と一緒なら……!
枢機卿というだけあり、神力を操る力は立派なのだろう。難しい治療を全て担っているのだから。
「急いで戻ろう! 血の匂いに魔物が集まってくる前に早く!」
「俺が前に行く」
アンドリューと真が琴子の止血と手足の固定を素早く終えると、アンドリューは琴子をお姫様抱っこで抱きかかえた。
そうなると琴子とアンドリューを守る人が居ない事を悟ってか、真が剣を抜いて先頭に立った。
「アンドリューの後ろに」
「私達が両サイドの少し後方から行きます」
私達は中心で守られるように駆け出した。
……強い魔物が出ませんように。出たとしても、神力で倒せるように、出来るだけ冷静を保つように集中した。
琴子の血が、パタパタと道に流れ落ちるのを見て、心が苦しく、そして悲しくもなったけれど。琴子を守る為、ただ前を見て必死に走った。
「何と!」
幸いに、道中で魔物と出会う事なく、私達は神殿へと無事に辿り着くと、そこには枢機卿が居て驚いた声をあげた。
……私達が森へと入った時から、ずっとそこで待っていたのだろうか。否、枢機卿なら心配で待っていてくれそうだ。
そして、直ぐに琴子へと駆け寄り、状態を見ると真っ青な顔をした。
「直ぐに治療をするから、ここに下ろして下さい! キィ様! 瑞希様! 力を貸して下さい!」
擦り傷や切り傷、捻挫程度の治療なら少しは練習してきているけれど……骨折や抉られたような傷を治療した事なんてない。
……治せる自信なんてない。
キィは未だに嗚咽を繰り返して、まともに琴子の姿を見る事が出来そうになく、やるなら私しか居ないのだけれど身体が動かない。
――怖い。
何とかしなきゃ。
助けなきゃ。
そう思っているのに、身体の震えが止まってくれない。
命が消えそうになっている……こんな大けがをしている人を目のした事なんて今までなかった。
「うっ」
「瑞希様!」
傷口から白い骨のようなものが見えて、私も口を押えて、嗚咽をこらえると、デイルが背を撫でてくれた。
「木を!」
「まず止血をしよう」
アンドリューと真が素早く琴子の手当に入る。
アンドリューはともかく、同じ世界から召喚されてきた真は慣れていない光景なのに、冷静に対処出来ている。
私も琴子を助けないと!
そう思って動き出したいのに、むせ返るような血の匂いが鼻につき、またも嗚咽が出そうになる。
「キィ、神殿まで気を保て!」
「急いで神殿へと戻り、枢機卿と共に治療して下さい」
ウィルとデイルの言葉に、私とキィはハッとした。
私だけじゃ……私達だけでは、やった事ないと自信がなかったけれども、枢機卿と一緒なら……!
枢機卿というだけあり、神力を操る力は立派なのだろう。難しい治療を全て担っているのだから。
「急いで戻ろう! 血の匂いに魔物が集まってくる前に早く!」
「俺が前に行く」
アンドリューと真が琴子の止血と手足の固定を素早く終えると、アンドリューは琴子をお姫様抱っこで抱きかかえた。
そうなると琴子とアンドリューを守る人が居ない事を悟ってか、真が剣を抜いて先頭に立った。
「アンドリューの後ろに」
「私達が両サイドの少し後方から行きます」
私達は中心で守られるように駆け出した。
……強い魔物が出ませんように。出たとしても、神力で倒せるように、出来るだけ冷静を保つように集中した。
琴子の血が、パタパタと道に流れ落ちるのを見て、心が苦しく、そして悲しくもなったけれど。琴子を守る為、ただ前を見て必死に走った。
「何と!」
幸いに、道中で魔物と出会う事なく、私達は神殿へと無事に辿り着くと、そこには枢機卿が居て驚いた声をあげた。
……私達が森へと入った時から、ずっとそこで待っていたのだろうか。否、枢機卿なら心配で待っていてくれそうだ。
そして、直ぐに琴子へと駆け寄り、状態を見ると真っ青な顔をした。
「直ぐに治療をするから、ここに下ろして下さい! キィ様! 瑞希様! 力を貸して下さい!」
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