異世界へ五人の落ち人~聖女候補とされてしまいます~

かずきりり

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第一章

44.恵01

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「招待状の手配も終わったし……あとは席次やドレスに合わせた小物……他なんだっけ」
「もう家着いたぞ。とりあえず休め」
「そうだね! また連絡するね!」

 もうすぐ結婚式。
 式場との打ち合わせが終わり、婚約者の樹に家まで送ってもらった。
 休む前に明日の仕事内容も確認しないと。折角、昇進がかかったチャンスを貰ったのだから!
 そう、私は幸せの絶頂に居た。居た筈なのに……。
 施錠を確認して、靴を脱ごうとした瞬間、私は落下する感覚に襲われた。

 ――瞬間、全く見た事のない建物に、脳が停止した。

 白昼夢かと思ったが、ごちゃごちゃと周囲が何か言っているし、他にも似たような人が居る。
 ……え? 異世界へ落ちた? 何を言っているの?



 それから私は必死に元の世界へと帰る方法を調べた。
 神力や生活魔術といったものがある、この世界。使えるものは全部使ってでも!
 そして文字も読めるようにした。いくつもの言語を学んでいたおかげか、すぐに解読できるようになった。
 だけれど帰る方法を記した書物が一切なく、過去に落とされた人達は誰も帰りたいなんて思わなかったのだろうかと疑問が残る。
 けれど、今はそんな事よりも帰る方法だ。

「ねぇ。神力の授業って、もっと早く進まないの?」
「それは、他の人とも合わせながらになるので難しいでしょうね」

 護衛騎士なんて要らないと言ったのに、常に私の側で張り付いている。いっそストーカーかと叫びたくなるも、書物や飲み物を取りに行かせたりして都合良く使ってる。その分、時間短縮にもなるしね。
 もっと早く神力の力を上昇させたかったのだけれど……無理なら自力で独学かと、私はまたも書物へと視線を落とす。
 そして錬金術や魔法陣を見つけ……解読の為に古代文字も勉強していれば、瑞希がやってきて協力を頼んだ。
 言わないだけで、本当は帰りたいと思っているのかもしれない。だって瑞希の瞳には後悔の色がある。

 ――知識は武器になる。

 何をどう選ぶのかは知らないけれど、自分の為にと頑張っているのは知っている。
 そして……一人で学ぶより結構楽しいな、なんて思ってしまっている私が居た。このまま此処に……とは思わないけれど。それでも悪い生活ではなかった。
 それも、王太子の登場で呆気なく崩れてしまったけれど。

「贈り人メグミ! あなたには辺境へと行ってもらう!」

 勝手にすればいい。どこへ行ったって、私がやる事は同じだ。
 絶対に樹の側へと帰る。ただそれだけなのだから。
 私は了承し、すぐさま辺境へと向かった。
 ほとんどの書物は読みつくした。後は実験していくだけなのだから――。
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