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第一章
37.塔の中は
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円状に高くなっている塔は絵本の中そのもので、入り口がひとつに、小さい窓がいくつかついている。
扉を開けば、そこは広間になっており、外の壁に面して円状に階段が上へと続いている。
「ここは生活スペースのようですね」
デイルが率先して中を確認する。
キッチン等の水回りとリビング。奥には浴室とトイレ。
天井が高く、それなりに明かりも入ってきていて、そこまで不便はなさそうだし、パッと見て違和感なんてない。
「上へ行きましょうか」
……あの高さ分だけ階段があるのか。むしろ階段しかないのかと、げんなりするけれど、 登らなければ何も分からない。
よし! と気合を入れて、皆の後に続いて階段を登っていく。
ロランのベッドルームだろう部屋。その上階には恵のベッドルーム。
ロランの方が下なのは警備的な都合もあるのだろう。そのどちらも変わった様子はない。
否、お金等が置きっぱなしな所は十分に変わっているだろうけれど、今はもうそこではない。
……部屋が三階。うん、きつい。私的に恵、凄いなぁと思いながらと思いながら次の階へと進めば、目の前に広がる光景で恵の凄さを更に実感した。
「これは……」
王太子は息を飲んだ。
床には大きな魔法陣。その周囲は試し書きされただろう魔法陣の紙が沢山落ちている。
部屋はこれで最後なのだが、階段だけはまだ上へと続いている。屋上みたいなものでもあるのかと思ったが、その階段は物置のように本が山積みとなっていて登れそうにない。
恵はここでも必死で研究していたのかと感慨深く思ったのだけれど、王太子や枢機卿の顔色は悪い。
「……あまりに酷い執着だと思ってはいましたが……」
「ここまでとは……報告してもらって助かったが……これは……」
報告?
アンドリューの言葉に対して、王太子の返答が気になった。
つまり、恵の研究を報告していたのはアンドリューという事だろうか。琴子も気が付いたのか、驚いたようにアンドリューを見上げた。
……護衛、そして監視ならば、報告義務は発生するだろう。だけれど、まさかのアンドリューだったとは。
「……ロランは一体、何をやっていたんだ……!」
悔しそうに歯ぎしりをする王太子を横に、枢機卿が前へと出て、魔法陣をじっくりと眺める。
「……こんな魔法陣、見た事ありません。恵様が自分で作ったのでしょう……発動した後も見られます。……そして、これは……」
枢機卿が魔法陣の真ん中で、手に持って掲げたもの。
それは恵の、向こうで着ていた服だった。
「まさか……この魔法陣が原因なのか?」
王太子の言葉に、目の前が真っ暗になるようだった。
扉を開けば、そこは広間になっており、外の壁に面して円状に階段が上へと続いている。
「ここは生活スペースのようですね」
デイルが率先して中を確認する。
キッチン等の水回りとリビング。奥には浴室とトイレ。
天井が高く、それなりに明かりも入ってきていて、そこまで不便はなさそうだし、パッと見て違和感なんてない。
「上へ行きましょうか」
……あの高さ分だけ階段があるのか。むしろ階段しかないのかと、げんなりするけれど、 登らなければ何も分からない。
よし! と気合を入れて、皆の後に続いて階段を登っていく。
ロランのベッドルームだろう部屋。その上階には恵のベッドルーム。
ロランの方が下なのは警備的な都合もあるのだろう。そのどちらも変わった様子はない。
否、お金等が置きっぱなしな所は十分に変わっているだろうけれど、今はもうそこではない。
……部屋が三階。うん、きつい。私的に恵、凄いなぁと思いながらと思いながら次の階へと進めば、目の前に広がる光景で恵の凄さを更に実感した。
「これは……」
王太子は息を飲んだ。
床には大きな魔法陣。その周囲は試し書きされただろう魔法陣の紙が沢山落ちている。
部屋はこれで最後なのだが、階段だけはまだ上へと続いている。屋上みたいなものでもあるのかと思ったが、その階段は物置のように本が山積みとなっていて登れそうにない。
恵はここでも必死で研究していたのかと感慨深く思ったのだけれど、王太子や枢機卿の顔色は悪い。
「……あまりに酷い執着だと思ってはいましたが……」
「ここまでとは……報告してもらって助かったが……これは……」
報告?
アンドリューの言葉に対して、王太子の返答が気になった。
つまり、恵の研究を報告していたのはアンドリューという事だろうか。琴子も気が付いたのか、驚いたようにアンドリューを見上げた。
……護衛、そして監視ならば、報告義務は発生するだろう。だけれど、まさかのアンドリューだったとは。
「……ロランは一体、何をやっていたんだ……!」
悔しそうに歯ぎしりをする王太子を横に、枢機卿が前へと出て、魔法陣をじっくりと眺める。
「……こんな魔法陣、見た事ありません。恵様が自分で作ったのでしょう……発動した後も見られます。……そして、これは……」
枢機卿が魔法陣の真ん中で、手に持って掲げたもの。
それは恵の、向こうで着ていた服だった。
「まさか……この魔法陣が原因なのか?」
王太子の言葉に、目の前が真っ暗になるようだった。
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