異世界へ五人の落ち人~聖女候補とされてしまいます~

かずきりり

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第一章

30.女性の手仕事

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 自由に、気ままに。
 と言っても、食事の時間と講習以外は暇を持て余していた。
 恵も居ないし。むしろあんな事があったからこそ、魔法陣を自主的に勉強しようなんて気も起きなかった。
 せいぜい庭を見て回る程度だったのだけれど……それも飽きた。探検も一通りやれば終わるのだ。

「……この世界で女性の仕事って言えば何なのだろう?」

 一応女性の、と付けたのは昔っぽい感じがしたからだ。聖女という名前もそうだし、神官という名前もしかり。
 今は保母さんなく、保育士。看護婦でなく、看護師。
 男女関係なく、分け隔てなく平等にする、というのがない感じなのだ。まぁ、言うなれば本当に古風な世界とでも言うべきか。

「そうですね……侍女やメイド……結婚して男性を支える裏方なんていうのもありますが……」

 ほら、みろ。やはりそうか。
 私は思わず目を細めてしまう。
 男女平等といった所で、身体の違いは否が応でも成長と共に感じるのだ。それはもはやハンデとしか思えない。

「なら趣味は……?」

 掃除や洗濯などは、その時々に教えてもらえば良いだろうし。そもそも、その前に必要となるのはマナーだろうと思い、別の方向で質問してみた。

「刺繍やレース作り……ですかね」

 何そのハンドメイド。
 せいぜい力任せに雑巾と化したものしか縫った事はありませんけど!?
 だけれど……暇にしてるのならば挑戦してみるのも、また一興では? あわよくばそれも仕事に繋がるかもしれない!

「ものは試し! 一度やってみたいのだけど」
「では、そのように手配します。……講師の方も必要ですよね?」
「それはもう! お願いします!」

 勝手にやれと言われても出来ない。
 きっと作り方の本があったとしても無理だろう。書かれている事が既に意味不明になりそうだ。
 料理の本だって、塩ひとつまみとかあるけれど、ひとつまみって何!? いちょう切りって何!? と思いながら作ったものだ。
 取扱説明書だってそう。たまに必要事項が小さい字だったり、組み立てを飛ばされていたり。簡潔にしたいのだろうけど簡潔すぎだ! と叫んだ事は数知れず。
 初心者、無暗に手を出すな。
 そんな事だけが心に刻まれた現代日本。
 ……文字がやっと読める程度になった私には、ただの暗号にしか思えないのは目に見えて分かるのだ。

「刺繍ならば私が教えられますよ。平民の時は自分の事は自分でしますからね」

 にこにこ顔でやってきた枢機卿に刺繍を教えてもらう事になった。
 なるほど、平民になれば出来ないといけないのか。脳内メモだ!
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