異世界へ五人の落ち人~聖女候補とされてしまいます~

かずきりり

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第一章

27.用済みにならないように

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 聖女候補、つまり贈り人とはいえ、問題児は用済み。
 それは私の心に影を差すには十分だった。

「大丈夫ですか? 瑞希様」
「あ、うん。大丈夫」

 眩暈から始まり、熱っぽい、頭がボーっとするなど、体調は少しずつ崩れていた。
 ふらふらとする身体を気合で起こし、次の勉強へと向かう。

「少し休みましょう」
「大丈夫だって」

 普通の生活を保つ為なら自我をなくせ、贈り人として尽くせ、励め、我慢しろという事だろう。
 辺境がどういった所か分からないけれど、ロランはとても嫌がっていた。国が衣食住の保障をする代わりに尽くせというならば、これが私達の仕事である。休んでなんていられない。
 せめて貯金して、もっとこの世界を学んで常識を身に着けて……完全に自立できるようになったら自由を掴めるかもしれないけれど。

「大丈夫なお顔の色ではありません!」

 デイルが厳しく声をあげたが、所詮は護衛騎士だ。監視の役割もある。
 贈り人を一人も逃がしたくないし、死なせたくないだけだろう。
 ……自立したからといって、自由がもぎ取れるか謎だなぁ。

「ありがとう」

 ボーっとする頭で考えながら、上辺だけ感謝の言葉を口にする。
 信用は出来ない。所詮デイルは国の犬なのだ。
 裏がある親切なんて心に響かない。響くわけがない。
 私はそのまま、講義が行われる部屋へと向かった。





「……瑞希……」
「あ、琴子」

 授業が終わった後、私は琴子に呼び止められて部屋へと誘われた。
 部屋の中に護衛騎士達は入らないで二人だけで話をしたいと言われ、今は部屋に二人っきりだ。デイルとアンドリューは部屋の前で待機している。
 少し難色を示されたけれど、着替えや寝る時などは出ていっているのだから良いだろうと後押ししたのだ。

「私、怖い」
「……」

 何が、とは言わない。
 だいたい想像がつくのだから。

「危険だからと、どこかへ追放されて……用済みとなったら、どうなるの?」

 さすがにそれはないだろうと思うけれど、分からない。
 贈り人の重要性も、神力の強さも、私達には全く分からない事だらけなのだ。
 今色々と教えられているけれど、正直な所それも真実なのかどうかと言われれば、判断などできないのだから。

 ――そう、判断できないのだ。

 琴子と話す内容を頭で考えていれば、そんな答えに辿り着いた。
 ここで信じられるのは自分自身しかいないのだ。もはや自分の感だけと言っても良い程だ。

「……この世界での常識を知るしかないよね」

 私は、そんな無難な言葉を返すしかできなくて。
 琴子も頑張ると、小さい声で返してくるだけだった。
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