21 / 73
第一章
21.追い出されました
しおりを挟む
驚きと恐怖からだろうか。キィの身体が一瞬ビクリと揺れた後、堰を切ったかのようにキィは大声を上げて泣き始めた。
それを見ると年相応に思える。
どれだけ強がろうと、子どもは子どもなのだと。
「あー! もう煩い! 全員出ていって!」
「え」
ブチ切れただろう恵が、大声を張り上げる。
もはやとばっちりでしかない私は素っ頓狂な言葉をあげてしまう。
「折角今、新しい事を思いつきそうだったのに! 邪魔! 出てけ!」
問答無用で追い出されるかのように、ロラン以外の全員は図書館から叩きだされてしまう。
「全く……私は部屋に戻るわ」
興を削がれたという感じで、琴子は自分の部屋へと戻っていく。
それにアンドリューも連なる形で後を追う……のだけれど、一瞬だけ図書館の方へ侮蔑めいた厳しい目つきを向けた。
「あー、よしよし」
その視線が気になったけれど、キィは泣き止むどころか更に声をあげており、真が必死にあやしている。
……子どもをあやした事なんてないのだけれど。
どうしたら良いものかと思うものの、このまま放置して部屋に帰るという事も心情的に出来ない私は、ただ付き添っていた。
「メイドに言われて様子を見に来たんだけど……何があった?」
あー、やっぱりか。
真を呼んできただろうメイドは、直ぐまたどこかへ行った。枢機卿という言葉が聞こえたので、今度は枢機卿でも呼んでくるのだろう。
「実は……」
私は今までの事を説明した。勿論、最初から。
キィの誤解を解く為、キィに聞かせるという意味も込めて。
「へぇ、面白い事してるのなー」
説明を聞いて声を上げたのはウィルだった。
その目に好奇心を宿し、声は喜々としている。そこはまだ幼さが残る年相応の少年と言ったところか。
……まぁ、好奇心が勝るのは私も分かるけれど。
「でも生活魔術って、そんな難しいか? キィは見事に使いこなしているけど」
「え? ……お湯も、灯りも?」
私の言葉に、ウィルは何度か頷く。
魔法陣に頼って何とか一人自立出来ているというのに……キィはその全てを自分で賄えるという事か!?
「凄いじゃないか」
「……ほんと?」
真は純粋に褒めて、キィの頭を撫でまくる。
キィも少し落ち着いたのか、まだしゃくりあげているものの涙は収まってきている。
誰も出来ていない事を成し遂げているという喜びも溢れているようで、少し笑顔も見えた。
……そういえば、真は一体今まで何をしていたのだろう。キィと同じように勉強でもしていたのだろうか。
「キィ様!? ミズキ様! マコト様!」
たずねたかったけれど枢機卿が来た事により、この場は解散となった。
それを見ると年相応に思える。
どれだけ強がろうと、子どもは子どもなのだと。
「あー! もう煩い! 全員出ていって!」
「え」
ブチ切れただろう恵が、大声を張り上げる。
もはやとばっちりでしかない私は素っ頓狂な言葉をあげてしまう。
「折角今、新しい事を思いつきそうだったのに! 邪魔! 出てけ!」
問答無用で追い出されるかのように、ロラン以外の全員は図書館から叩きだされてしまう。
「全く……私は部屋に戻るわ」
興を削がれたという感じで、琴子は自分の部屋へと戻っていく。
それにアンドリューも連なる形で後を追う……のだけれど、一瞬だけ図書館の方へ侮蔑めいた厳しい目つきを向けた。
「あー、よしよし」
その視線が気になったけれど、キィは泣き止むどころか更に声をあげており、真が必死にあやしている。
……子どもをあやした事なんてないのだけれど。
どうしたら良いものかと思うものの、このまま放置して部屋に帰るという事も心情的に出来ない私は、ただ付き添っていた。
「メイドに言われて様子を見に来たんだけど……何があった?」
あー、やっぱりか。
真を呼んできただろうメイドは、直ぐまたどこかへ行った。枢機卿という言葉が聞こえたので、今度は枢機卿でも呼んでくるのだろう。
「実は……」
私は今までの事を説明した。勿論、最初から。
キィの誤解を解く為、キィに聞かせるという意味も込めて。
「へぇ、面白い事してるのなー」
説明を聞いて声を上げたのはウィルだった。
その目に好奇心を宿し、声は喜々としている。そこはまだ幼さが残る年相応の少年と言ったところか。
……まぁ、好奇心が勝るのは私も分かるけれど。
「でも生活魔術って、そんな難しいか? キィは見事に使いこなしているけど」
「え? ……お湯も、灯りも?」
私の言葉に、ウィルは何度か頷く。
魔法陣に頼って何とか一人自立出来ているというのに……キィはその全てを自分で賄えるという事か!?
「凄いじゃないか」
「……ほんと?」
真は純粋に褒めて、キィの頭を撫でまくる。
キィも少し落ち着いたのか、まだしゃくりあげているものの涙は収まってきている。
誰も出来ていない事を成し遂げているという喜びも溢れているようで、少し笑顔も見えた。
……そういえば、真は一体今まで何をしていたのだろう。キィと同じように勉強でもしていたのだろうか。
「キィ様!? ミズキ様! マコト様!」
たずねたかったけれど枢機卿が来た事により、この場は解散となった。
23
お気に入りに追加
101
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
私は聖女(ヒロイン)のおまけ
音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女
100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女
しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。
運命の改変、承ります
月丘マルリ(12:28)
恋愛
凶悪な魔術師を倒した聖騎士は、最後に不死の呪いをかけられ、呪われた英雄と呼ばれるようになった。彼は呪いを変えることができる魔女のもとへ訪れる。魔女はいう。「呪いを緩和するために、生贄となる花嫁が必要だ」と。呪われた英雄と魔女の婚活が始まった。
お引越し。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~
丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。
一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。
それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。
ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。
ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。
もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは……
これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
影の聖女として頑張って来たけど、用済みとして追放された~真なる聖女が誕生したのであれば、もう大丈夫ですよね?~
まいめろ
ファンタジー
孤児だったエステルは、本来の聖女の代わりとして守護方陣を張り、王国の守りを担っていた。
本来の聖女である公爵令嬢メシアは、17歳の誕生日を迎えても能力が開花しなかった為、急遽、聖女の能力を行使できるエステルが呼ばれたのだ。
それから2年……王政を維持する為に表向きはメシアが守護方陣を展開していると発表され続け、エステルは誰にも知られない影の聖女として労働させられていた。
「メシアが能力開花をした。影でしかないお前はもう、用済みだ」
突然の解雇通知……エステルは反論を許されず、ろくな報酬を与えられず、宮殿から追い出されてしまった。
そんな時、知り合いになっていた隣国の王子が現れ、魔導国家へと招待することになる。エステルの能力は、魔法が盛んな隣国に於いても並ぶ者が居らず、彼女は英雄的な待遇を受けるのであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!
近藤アリス
恋愛
私生児聖女のコルネリアは、敵国に二束三文で売られて嫁ぐことに。
「悪名高い国王のヴァルター様は私好みだし、みんな優しいし、ご飯美味しいし。あれ?この国最高ですわ!」
声を失った儚げ見た目のコルネリアが、勘違いされたり、幸せになったりする話。
※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です!
※「カクヨム」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる