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第一章
16.魔法陣と古代語
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素直に羨ましいという感情があるものの、そんな悲しみに呑まれるのは嫌だという感情が相反する。
「……何か皆、元の世界に執着してないのね。何か訳ありっぽいのも居るし。……でも、あんたは微妙でしょ。どこか後悔が宿ってる」
恵は真剣な瞳で私を見て言ったけれど、即答なんてする事が出来ない。
後悔はある。けれど、どうしても戻りたいわけではない。かといって、こちらで生きていく事に前向きなわけでもない。
言うなれば、私の中にあるのは虚無感に近いのではないだろうか。ただ、後悔が一点だけある、虚無。
「私は絶対帰る。だから魔術や神力だけでなく、こういった魔法陣も……使えるものは全部使ってでも!!」
熱い。ここまで熱くなれるのは、凄い。
私がこんなに情熱を持ったのは、どれだけ昔なのだろう。……私の方が年下なのに。
「……興味はある……かな」
帰る情熱はない。
けれど、知らない知識を欲する気持ちはある。生活魔術に神力、それに魔法陣も覚えれば、更に自立できるのではという思い。
そして……それには理沙への後悔が、どこか帰る希望を後押しするように口から放たれた。
「一緒に調べてくれるというなら大歓迎だけどね」
恵の口角が少し上がり、妖艶な微笑が私の胸を貫いた。
美人の微笑は心臓に悪い!
というか、微笑でこれだけ魅せられるなら、満面の微笑みとは一体どれだけの破壊力があるのだろう。
「でも、まだ文字を覚えてなくて。……魔法陣の文字は、また違うよね」
「まだ覚えてないの? こっちは古代語みたいね。辞書みたいなのがなくて解読が難しいわ」
「……まだ……?」
異世界に落とされて一ヵ月とちょっとなのに、恵の言葉はまるで文字を全て理解しているかのようで……恐る恐る恵の方を向く。
そんな私に恵は首を傾げたが、何となく理解をしたのか、あっけらかんとした感じで口を開いた。
「文字は覚えたわよ? 元の世界でも私は三か国語くらいは出来ていたし」
「えぇえええ!!??」
英語すらマトモに話せない女子高生ですけど、私!
「ヤル気になれば聖女様の地位も簡単に手に入れそうなのですけどね……」
「興味ないわよ」
ロランの言葉に鋭く返した恵は、何冊かの本を手にとって、口を開けて驚きっぱなしの私へと渡してきた。
「文字を勉強するなら、ここら辺がおすすめよ」
意外と優しいのかもしれない。と思ったけれど、あまりに分厚い冊子を五冊も渡すのは、果たして優しさ……? いや、優しさだろう。
何となくでやっていた勉強だけれど、私ももっと頑張ろうと心に決めた。
「……何か皆、元の世界に執着してないのね。何か訳ありっぽいのも居るし。……でも、あんたは微妙でしょ。どこか後悔が宿ってる」
恵は真剣な瞳で私を見て言ったけれど、即答なんてする事が出来ない。
後悔はある。けれど、どうしても戻りたいわけではない。かといって、こちらで生きていく事に前向きなわけでもない。
言うなれば、私の中にあるのは虚無感に近いのではないだろうか。ただ、後悔が一点だけある、虚無。
「私は絶対帰る。だから魔術や神力だけでなく、こういった魔法陣も……使えるものは全部使ってでも!!」
熱い。ここまで熱くなれるのは、凄い。
私がこんなに情熱を持ったのは、どれだけ昔なのだろう。……私の方が年下なのに。
「……興味はある……かな」
帰る情熱はない。
けれど、知らない知識を欲する気持ちはある。生活魔術に神力、それに魔法陣も覚えれば、更に自立できるのではという思い。
そして……それには理沙への後悔が、どこか帰る希望を後押しするように口から放たれた。
「一緒に調べてくれるというなら大歓迎だけどね」
恵の口角が少し上がり、妖艶な微笑が私の胸を貫いた。
美人の微笑は心臓に悪い!
というか、微笑でこれだけ魅せられるなら、満面の微笑みとは一体どれだけの破壊力があるのだろう。
「でも、まだ文字を覚えてなくて。……魔法陣の文字は、また違うよね」
「まだ覚えてないの? こっちは古代語みたいね。辞書みたいなのがなくて解読が難しいわ」
「……まだ……?」
異世界に落とされて一ヵ月とちょっとなのに、恵の言葉はまるで文字を全て理解しているかのようで……恐る恐る恵の方を向く。
そんな私に恵は首を傾げたが、何となく理解をしたのか、あっけらかんとした感じで口を開いた。
「文字は覚えたわよ? 元の世界でも私は三か国語くらいは出来ていたし」
「えぇえええ!!??」
英語すらマトモに話せない女子高生ですけど、私!
「ヤル気になれば聖女様の地位も簡単に手に入れそうなのですけどね……」
「興味ないわよ」
ロランの言葉に鋭く返した恵は、何冊かの本を手にとって、口を開けて驚きっぱなしの私へと渡してきた。
「文字を勉強するなら、ここら辺がおすすめよ」
意外と優しいのかもしれない。と思ったけれど、あまりに分厚い冊子を五冊も渡すのは、果たして優しさ……? いや、優しさだろう。
何となくでやっていた勉強だけれど、私ももっと頑張ろうと心に決めた。
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