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第一章
15.図書館で恵と
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「入ってみますか?」
ロランの声に私は頷いた。
案内の時以来、2回目。足を踏み入れたそこは前と変わらず、とても広く天井も高い。そして天井に届く位の本棚にぎっしりと入れられた本。この蔵書数には圧倒される。
適当にブラブラと見て回る。
国の事から宗教、マナー、医療や薬草等の辞典。更には魔術や神力の事、中には絵本まで様々なものがおさめられている。まぁ、神力や宗教関係のものが多いのは神殿の敷地内ならではなのだろうか。更に国へと仕えていない特性からか、知らない文字の書物まである。
――落ち人。
ふと、目についたタイトルが気になって、本を手に取り蔵書を開く。
増産されている本とは違い、手仕事で端が縛り上げられているのが分かるし、中の文字も手書きだ。一冊一冊作られているのだろう。というか、もしかすると世界で一冊しかない本もあるのかもしれない。
「凄い……な」
感嘆の声が口から漏れる。
一冊作るのに、どれだけの時間がかかるだろう。絵も細部に拘って描かれている本たちは、とても貴重なものだろう。それが……これだけの冊数あるなんて、感動する。
「あれとそれ! あとこれも持ってくわよ!」
「……こんなに必要ですか?」
「当たり前でしょ!」
あの声は恵とロランだ。聞こえた図書館奥の方へと歩を進める。
このコーナーは……?
「あぁ……もう! 理論の組み立てが難しいわね!」
紙に図形や文字を描きこんでいる恵を見つける。
……本のタイトルには、やたらと魔法……何だろ、魔法までは読めるんだけれど。
「あれ? えっと……瑞希、だっけ?」
「あ、はい」
年上に対して、条件反射的に丁寧な答えを使う。
「ねぇ、あんたはこのままで良いの?」
「……はい?」
同じ文章でも、語尾の上げ下げで意味が変わる日本語よ。
私の答えに溜息をついた恵だけれど、私が興味深そうに恵の手元にある紙へと視線を送っているのに気が付いたのだろう。少し口角を上げた。
「気になる?」
「それは?」
「昔に使われていた魔法陣と呼ばれるものらしいわ。でも使い方は錬金術みたいなものね」
魔法……タイトルは魔法陣か!
そして錬金術……つまり等価交換とでも言いたいのだろうか。
同じ物質で違う物を作り上げるとか、何かを差し出して何かを行う。そんなイメージしかないのだけれど。いや、それは広義の意味か。金属のみだっけ?
私は言葉に裏でもあるのかと首を傾げていれば、恵は遠くを見つめながら言った。
「あんたは戻りたくないの?」
それは遠くに居る婚約者へと思いを馳せているのだろうか。
……残してきた大切な人へと向けて。
ロランの声に私は頷いた。
案内の時以来、2回目。足を踏み入れたそこは前と変わらず、とても広く天井も高い。そして天井に届く位の本棚にぎっしりと入れられた本。この蔵書数には圧倒される。
適当にブラブラと見て回る。
国の事から宗教、マナー、医療や薬草等の辞典。更には魔術や神力の事、中には絵本まで様々なものがおさめられている。まぁ、神力や宗教関係のものが多いのは神殿の敷地内ならではなのだろうか。更に国へと仕えていない特性からか、知らない文字の書物まである。
――落ち人。
ふと、目についたタイトルが気になって、本を手に取り蔵書を開く。
増産されている本とは違い、手仕事で端が縛り上げられているのが分かるし、中の文字も手書きだ。一冊一冊作られているのだろう。というか、もしかすると世界で一冊しかない本もあるのかもしれない。
「凄い……な」
感嘆の声が口から漏れる。
一冊作るのに、どれだけの時間がかかるだろう。絵も細部に拘って描かれている本たちは、とても貴重なものだろう。それが……これだけの冊数あるなんて、感動する。
「あれとそれ! あとこれも持ってくわよ!」
「……こんなに必要ですか?」
「当たり前でしょ!」
あの声は恵とロランだ。聞こえた図書館奥の方へと歩を進める。
このコーナーは……?
「あぁ……もう! 理論の組み立てが難しいわね!」
紙に図形や文字を描きこんでいる恵を見つける。
……本のタイトルには、やたらと魔法……何だろ、魔法までは読めるんだけれど。
「あれ? えっと……瑞希、だっけ?」
「あ、はい」
年上に対して、条件反射的に丁寧な答えを使う。
「ねぇ、あんたはこのままで良いの?」
「……はい?」
同じ文章でも、語尾の上げ下げで意味が変わる日本語よ。
私の答えに溜息をついた恵だけれど、私が興味深そうに恵の手元にある紙へと視線を送っているのに気が付いたのだろう。少し口角を上げた。
「気になる?」
「それは?」
「昔に使われていた魔法陣と呼ばれるものらしいわ。でも使い方は錬金術みたいなものね」
魔法……タイトルは魔法陣か!
そして錬金術……つまり等価交換とでも言いたいのだろうか。
同じ物質で違う物を作り上げるとか、何かを差し出して何かを行う。そんなイメージしかないのだけれど。いや、それは広義の意味か。金属のみだっけ?
私は言葉に裏でもあるのかと首を傾げていれば、恵は遠くを見つめながら言った。
「あんたは戻りたくないの?」
それは遠くに居る婚約者へと思いを馳せているのだろうか。
……残してきた大切な人へと向けて。
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