異世界へ五人の落ち人~聖女候補とされてしまいます~

かずきりり

文字の大きさ
上 下
7 / 73
第一章

07.護衛騎士達

しおりを挟む
「異世界に魔術や神力というものはないと聞きます。潜在的に神力が身体の中へ宿っているとは言っても、外へと力を出す方法を覚えていただく事が最初となりますので」

 なるほど。確かにそんな方法、私は知らない。というか現代日本でそんな方法を知っている奴が居るとしたら、それはもう超能力とか霊能力あたりになるのではないだろうか。
 というか、魔術がある?

「生活魔術……?」
「生活に必要な魔術です。これがないと色々と不便ですので……そのサポートも護衛騎士の方々がしてくれるでしょう。紹介致します」

 いや、それ真はどう足掻いても不便になるやつじゃない。護衛騎士が居ないのだから。
 思わず眉間に皺を寄せるが、枢機卿自身もどこか申し訳なさそうに真へと頭を下げた。

「マコト様には大変申し訳ございません。メイド達に色々と申しつけて下さい」
「はい、分かりました。ありがとうございます」

 物分かりが良すぎというか、何事もない感じで平然そうにしている。

「では私から。コトコ様の護衛騎士を申し付けられましたアンドリュー・ドロワです。ドロワ子爵家の三男。歳は25になります」

 先ほど声を放った、いかつい強面の騎士が頭を下げて琴子の後ろへとついた。
 アップバングの赤い髪に茶色の瞳。身長は190cm程だろうか。しっかりと筋肉のついた体つきで、ザ・騎士というのを体現している。
 それを見た琴子は驚き、少し怯えた表情を見せ身体を震わせたが、頭を下げて口を開いた。

「相田琴子です。29歳で専業主婦……家の事をしておりました」

 アラサーくらいで合ってた!
 昨日に比べたら少し磨かれたのか、髪はまとまり肌も綺麗になっているから、年齢相応に見えるだろう。痣や怪我も手当されているようだ。

「俺はデイル・ラングール。ラングール侯爵家の三男で17になります」

 水色のツーブロックに緑の瞳をした凛々しい青年が私の後ろに立った。
 187cmの身長で、程よく筋肉がついているバランスの良い体格は見事なものだと思う。

「早瀬瑞希。16歳で高校生……学生です」

 琴子が言葉を言い換えた理由が分かった。こちらの人に分かりやすい言い換えをしたのだろう。
 私も高校生と言って通じるか謎だけれど、学生と言えば通じるだろう。
 しかし国王も考えたのか、だいたい同じ年くらいの人を配置しているのだろうか。それも気遣い……否、国から逃げないよう心理的に縛り付けるつもりかもしれないけれど。
 チラリと私は護衛騎士の中で一番年下そうな子に目を向けた。
 案の定、その子は希生の元へと歩みを進めた。
しおりを挟む
ツギクルバナー

あなたにおすすめの小説

私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女 100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女 しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。

運命の改変、承ります

月丘マルリ(12:28)
恋愛
 凶悪な魔術師を倒した聖騎士は、最後に不死の呪いをかけられ、呪われた英雄と呼ばれるようになった。彼は呪いを変えることができる魔女のもとへ訪れる。魔女はいう。「呪いを緩和するために、生贄となる花嫁が必要だ」と。呪われた英雄と魔女の婚活が始まった。  お引越し。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~

丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。 一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。 それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。 ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。 ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。 もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは…… これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

影の聖女として頑張って来たけど、用済みとして追放された~真なる聖女が誕生したのであれば、もう大丈夫ですよね?~

まいめろ
ファンタジー
孤児だったエステルは、本来の聖女の代わりとして守護方陣を張り、王国の守りを担っていた。 本来の聖女である公爵令嬢メシアは、17歳の誕生日を迎えても能力が開花しなかった為、急遽、聖女の能力を行使できるエステルが呼ばれたのだ。 それから2年……王政を維持する為に表向きはメシアが守護方陣を展開していると発表され続け、エステルは誰にも知られない影の聖女として労働させられていた。 「メシアが能力開花をした。影でしかないお前はもう、用済みだ」 突然の解雇通知……エステルは反論を許されず、ろくな報酬を与えられず、宮殿から追い出されてしまった。 そんな時、知り合いになっていた隣国の王子が現れ、魔導国家へと招待することになる。エステルの能力は、魔法が盛んな隣国に於いても並ぶ者が居らず、彼女は英雄的な待遇を受けるのであった。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!

近藤アリス
恋愛
私生児聖女のコルネリアは、敵国に二束三文で売られて嫁ぐことに。 「悪名高い国王のヴァルター様は私好みだし、みんな優しいし、ご飯美味しいし。あれ?この国最高ですわ!」 声を失った儚げ見た目のコルネリアが、勘違いされたり、幸せになったりする話。 ※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です! ※「カクヨム」にも掲載しています。

処理中です...