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第一章
05.異世界での翌日
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メイド達にお風呂へと入れられ、ゆっくり休んだ翌朝。
天蓋付きのベッドが目に入って虚無感に襲われる。いっそ夢であればと心のどこかで願っていたのだろう。
またもメイド達が来て、支度などを手伝わられる。……今まで自分でやっていたので、こうやって世話を焼かれる事に恥ずかしさや苛立ちが込み上げてくるけれど、何がどこにあるのかも分からないので、全てお任せするしかないのだ。
洗面台などなく、桶に汲まれたお湯で顔を洗い、どんな服装が良いのか分からないので服もお任せする。
まるで子供かと突っ込みたくもなるが、あながち間違っても居ない。だって私はこの世界で赤子同然なのだからと自分に言い聞かせる。
「枢機卿が朝食をご一緒にとお呼びです」
そう言えばお腹すいた。ここの食事は美味しいのだろうか。
聞きたい事もあるし、枢機卿と一緒ならいきなり毒殺される……なんて事ないよね? と不安に思いながらもメイドの後を付いて行けば、広間に縦長のテーブルが並べられた食堂のような場所へと通される。
「全員お揃いになりましたね」
どうやら私が一番最後だったらしい。
気が休まらないような場所でも、それなりに熟睡していたのだろう。確かに疲れはない。
自分の図太さに恥ずかしさを感じながらも、それを態度に出さないよう案内された席へつき皆を見渡す。
制服のようなものなのだろうか、皆同じ白い似たような衣装をまとっている。
「では改めまして。私は枢機卿のソウラと申します。教皇の補佐をしておりまして、実質ナンバー2ですね。出自は平民なのですが、教会では神力という実力が全てです」
平民ときたか。それは見事な貴族階級。
そこからナンバー2までのし上がれるって、この人、とんでもない人なんじゃないの!?
「教会は国をまたいで広く存在しておりまして、国に属してはおりません。贈り人方も神殿に属するようなものですが……なにぶん、落ちる場所がこの国にありまして……衣食住の金銭と引き換えに国への従事は昔に定められた契約書がありまして……」
教会は寄付によって保たれるので……と、枢機卿は言いずらそうに小さな声でもごもごと呟く。
あぁ、だから国がこんな絡んでいるのかと呆れてしまうけれど、生活するにも金が必要なのはどこの世界でも変わらない。
「とりあえず食事をしながら説明をしましょうか」
話題を変えるかのように枢機卿が言えば、メイド達が食事を運んでくる。パンにハム、それにチーズ。
まさに海外の食事のようで……両脇に控えるナイフとフォークに、私は絶句した。
天蓋付きのベッドが目に入って虚無感に襲われる。いっそ夢であればと心のどこかで願っていたのだろう。
またもメイド達が来て、支度などを手伝わられる。……今まで自分でやっていたので、こうやって世話を焼かれる事に恥ずかしさや苛立ちが込み上げてくるけれど、何がどこにあるのかも分からないので、全てお任せするしかないのだ。
洗面台などなく、桶に汲まれたお湯で顔を洗い、どんな服装が良いのか分からないので服もお任せする。
まるで子供かと突っ込みたくもなるが、あながち間違っても居ない。だって私はこの世界で赤子同然なのだからと自分に言い聞かせる。
「枢機卿が朝食をご一緒にとお呼びです」
そう言えばお腹すいた。ここの食事は美味しいのだろうか。
聞きたい事もあるし、枢機卿と一緒ならいきなり毒殺される……なんて事ないよね? と不安に思いながらもメイドの後を付いて行けば、広間に縦長のテーブルが並べられた食堂のような場所へと通される。
「全員お揃いになりましたね」
どうやら私が一番最後だったらしい。
気が休まらないような場所でも、それなりに熟睡していたのだろう。確かに疲れはない。
自分の図太さに恥ずかしさを感じながらも、それを態度に出さないよう案内された席へつき皆を見渡す。
制服のようなものなのだろうか、皆同じ白い似たような衣装をまとっている。
「では改めまして。私は枢機卿のソウラと申します。教皇の補佐をしておりまして、実質ナンバー2ですね。出自は平民なのですが、教会では神力という実力が全てです」
平民ときたか。それは見事な貴族階級。
そこからナンバー2までのし上がれるって、この人、とんでもない人なんじゃないの!?
「教会は国をまたいで広く存在しておりまして、国に属してはおりません。贈り人方も神殿に属するようなものですが……なにぶん、落ちる場所がこの国にありまして……衣食住の金銭と引き換えに国への従事は昔に定められた契約書がありまして……」
教会は寄付によって保たれるので……と、枢機卿は言いずらそうに小さな声でもごもごと呟く。
あぁ、だから国がこんな絡んでいるのかと呆れてしまうけれど、生活するにも金が必要なのはどこの世界でも変わらない。
「とりあえず食事をしながら説明をしましょうか」
話題を変えるかのように枢機卿が言えば、メイド達が食事を運んでくる。パンにハム、それにチーズ。
まさに海外の食事のようで……両脇に控えるナイフとフォークに、私は絶句した。
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