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息が詰まる
息が詰まる
息が詰まる
「じゃあ後は二人の時間にしてもらおうかしら」
「リズ様?」
思わず口から出た言葉に私自身が驚く反面、何となく腑に落ちた。もう見たくないと言う思いもあるけれど、息が詰まる。窮屈な空間でしかないのだ。
泣いて、泣いて、泣いて、悔しくて。
好きで、好きで、好きで、大好きで。
ダレンに対しての気持ちが嘘だという訳ではない。決して嘘ではないのだけれど……
私に対して何か粗相してしまったのか、気持ちを害してしまったのかと心配しているサラ様に対して、笑顔を向けようとしたのだけれど……
「お義姉様!?」
「リズ様!!」
「え……」
ハラハラと、目から涙がこぼれ落ちる。完全に無意識に出てきていた涙だけれど、何とか止めようとするも次から次へと溢れてくるばかりで、一向に涙が止まる事がない。
慌てたようにダレンがハンカチを差し出してくれて、サラ様は暖かいミルクティーと蜂蜜をメイドに頼んでいる。二人が私を心配して慌てている様子が何か嬉しくて、心地よくて、涙を流しながらも少しだけ笑みが溢れる。
「お義姉様?」
少し怪訝そうな表情をしながらダレンが声をかけてくる。そうね、私、ダレンにこんな姿を見せた事ないもの。
いつもいつも、一番良い私を見せる事しかしてこなかった。嫌われたくない……ただそれだけで……素の私を見せて愛される努力のようなものは一切してこなかった。
ダレンが何か粗相をしたら嫌いになってしまうかもしれない、それはきっと……愛情ではなくて……。
「リズ様……お淋しいのですか?」
心配そうに、しかしおずおずとサラ様がそんな事を言う。
ガラルが居ない事をダレンから聞いているのだろう。私達は仲の良い婚約者と言う事も知っている筈だ。
だからこそ、こうやって二人の逢瀬に私も呼んでくれていたのだろうか。サラ様の優しさにダレンも惹かれたのだろうか。
じーっとサラ様を見ていると、慌てたのかサラ様がカップに手をあてて紅茶をこぼしてしまう。
「失礼致しました!」
「サラ!火傷はない!?」
謝罪するサラ様に対し、何よりも身の安全を気にするダレンは、予備だろうハンカチで素早くサラ様の手を拭いている。
受け入れ、許し、愛する。
きっと私は……
「そうね……ガラルに会いたいわ……」
「会いに行けば宜しいではないですか」
「会いに行きましょう」
そう呟いた私に対して、二人は力強く肯定して背を押してくれた。
会いに……行っても良いわよね……。
確かめても……良いわよね……。
息が詰まる
息が詰まる
「じゃあ後は二人の時間にしてもらおうかしら」
「リズ様?」
思わず口から出た言葉に私自身が驚く反面、何となく腑に落ちた。もう見たくないと言う思いもあるけれど、息が詰まる。窮屈な空間でしかないのだ。
泣いて、泣いて、泣いて、悔しくて。
好きで、好きで、好きで、大好きで。
ダレンに対しての気持ちが嘘だという訳ではない。決して嘘ではないのだけれど……
私に対して何か粗相してしまったのか、気持ちを害してしまったのかと心配しているサラ様に対して、笑顔を向けようとしたのだけれど……
「お義姉様!?」
「リズ様!!」
「え……」
ハラハラと、目から涙がこぼれ落ちる。完全に無意識に出てきていた涙だけれど、何とか止めようとするも次から次へと溢れてくるばかりで、一向に涙が止まる事がない。
慌てたようにダレンがハンカチを差し出してくれて、サラ様は暖かいミルクティーと蜂蜜をメイドに頼んでいる。二人が私を心配して慌てている様子が何か嬉しくて、心地よくて、涙を流しながらも少しだけ笑みが溢れる。
「お義姉様?」
少し怪訝そうな表情をしながらダレンが声をかけてくる。そうね、私、ダレンにこんな姿を見せた事ないもの。
いつもいつも、一番良い私を見せる事しかしてこなかった。嫌われたくない……ただそれだけで……素の私を見せて愛される努力のようなものは一切してこなかった。
ダレンが何か粗相をしたら嫌いになってしまうかもしれない、それはきっと……愛情ではなくて……。
「リズ様……お淋しいのですか?」
心配そうに、しかしおずおずとサラ様がそんな事を言う。
ガラルが居ない事をダレンから聞いているのだろう。私達は仲の良い婚約者と言う事も知っている筈だ。
だからこそ、こうやって二人の逢瀬に私も呼んでくれていたのだろうか。サラ様の優しさにダレンも惹かれたのだろうか。
じーっとサラ様を見ていると、慌てたのかサラ様がカップに手をあてて紅茶をこぼしてしまう。
「失礼致しました!」
「サラ!火傷はない!?」
謝罪するサラ様に対し、何よりも身の安全を気にするダレンは、予備だろうハンカチで素早くサラ様の手を拭いている。
受け入れ、許し、愛する。
きっと私は……
「そうね……ガラルに会いたいわ……」
「会いに行けば宜しいではないですか」
「会いに行きましょう」
そう呟いた私に対して、二人は力強く肯定して背を押してくれた。
会いに……行っても良いわよね……。
確かめても……良いわよね……。
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