【完結】異世界で幽霊やってます!?

かずきりり

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58.身体を譲る!?

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 王子の声が聞こえない……どころか、王子の身体を使っているのは……俺?
 試しに腕を動かしてみれば、それは俺が動かそうと思った通りに動いた。あまりに無意識すぎて今まで変な違和感を感じるくらいだったのか?
 というか……記憶も、経験も、そのまま残っているかのように感じる。だけれど、確実に俺がこの身体を使っているようで……。

「……乗っ取った!?」
『いや、違うから』

 俺の盛大なる突っ込みに、王子は冷静な声で脳内へ語り掛ける……ん?俺が今、言葉を口に出した……?
 立場が逆転している現状に、俺はゾッとした。違うと言っても、まさに俺が王子の身体を乗っ取ったとしか思えない状況なわけで……。

『正確には、乗っ取らせた……というよりは、譲ったという方が正しいのかな』

 ――は?
 ――え?
 ――なに言ってんの?

 理解出来ない言葉を放たれた感覚……というか、言われた言葉を理解できない。むしろ理解する事を脳が拒否していると言った方が近いのか。
 一瞬の間、そんな事を考えている内に、いきなり俺の意識は遠くなっていった。








「こうして対面するのも久しぶりだね」

 目を開けた時、またしても前に居るのは王子で、以前言っていた精神世界という所なのだろうか。ただ、以前と違い、王子の身体が透けているようにも見える。

「……どういう事?」

 色んな出来事がありすぎて、脳の処理が追い付かない。
 何で俺が王子の身体を動かせたのか、どうして記憶があるのか。何より……目の前に居る王子は、どうして透けているのか。

「僕はね、死ぬ運命なんだ」
「は?…………いやいや、生きているし!」

 いきなり何を言いだすのだ、この王子は。
 身体が生きていて、戻れるのに。むしろ今、生きているようなものじゃないか。
 ……これから死ぬのか?いや、そんなシナリオはない。
 ぐるぐると思考が回る俺に、王子はクスクスと笑っている。いや、笑いごとじゃないよな!?

「だから、君に身体を譲るんだよ。そして僕は……消える」

 王子からハッキリと紡がれた言葉に、俺は呆然とした。
 死んで、転移するのではなく、乗り移るような行為だ。むしろそれを譲るとまで言い切る王子が理解しがたい。
 ……どうして、そう簡単に自分の身体を譲れるんだ?
 それに俺は他人の身体を乗っ取ってまで生きたいとは思わない……。

(あっ)

 そこまで考えて、浮かんだのはアイだ。
 出来る事ならば元の世界で幽霊として浮遊したかった。元の世界で終えたかった……けれど、ここにはアイが居る。
 この世界で、心残りが出来ている。
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