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54.変な一体化

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 俺がゲームの知識を伝え、王子が指示をし、周囲が動き、徐々に集まる証拠。……一体、どうやってヒロイン宅の家宅捜索みたいな事も出来たんでしょうね?
 一字一句間違いなく日本語を書き写してきたという人には脱帽だわ……。こんな面倒な文字、よく書いてきたな……。それを伝え、翻訳したものを王子が書くのも、また手間だったと思われるが。
 そんな日々を過ごしていたら、俺は、たまに王子が動いているのか自分が動いているのか分からなくなる時があった。

『こわっ!』
『いや、慣れて?』
『なんで!?』

 今、身体が動いたのは、自分の意思というか無意識でというか……。
 そのうち、王子の幼い時に体験した記憶のようなものまでも感じるようになってきた。

『一体化してない!?』
『既にしてるようなものだと思うけど?』
『そうだけど違う!』

 自分が自分じゃないような、でも自分なんだという、よく分からない感覚。自分じゃなくなるようだけれど、自我はハッキリしているというか……。
 人の記憶や感情が流れてくるってのは、とてつもなく気持ち悪い。
 同情とか同調とか、そういうのに近いけれど、全然違うような……言葉に言い表せられないもどかしさ。
 その度に俺が声をあげるが、王子は全く気にしていないようだ。普通、自分の記憶が除かれてるような事になったら嫌じゃないか?俺なら羞恥心でどっかに閉じこもりそうだ。

『アイに会いたい……』

 心配しているだろうアイを思えば、どうしてるのかと気になる。
 ずっと王子の身体に居るし、王子は学園に行く事がないから、アイの様子は全く分からない。たまに報告書があがってくるけれど、学園で問題なしとか、家でも問題なしという程度だ。
 ……アイの事だから、強がって見せているだけな気もする。

『まぁ、もう少しだから』
『もう少し?』

 アイに会わせてくれるのか。
 王子とアイが会う事に複雑な感情を持ちつつも、アイに会えるという喜びの方が勝る。もう少しって、あとどれくらいだ!と急かすよう問いかければ、王子は真剣な表情で一枚の書類を取り出した。

『……明日、現場をおさえる』

 そこには、立ち入り禁止となった場所へ隠れて兵を配置しているという事や、アニスへの監視。ブルーノやルネの動向を探る監視。現場を取り押さえる準備などの計画が書かれていた。

『あ…………』

 そうだ、明日だ。
 言い逃れ出来ない程の証拠を掴んだ。
 現場をおさえてしまえば、即逮捕。そのまま牢屋行きだ。勿論、売っている奴も捕まえる。
 二人を絶対に逃がさないという王子の思いも流れ込んでくる。
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