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52.茉莉花の艶

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『情けない!』

 バンッ!!

 人払いをした部屋で一人紅茶を飲んでいた王子……という図の中、脳内だけで会話をしていた俺達だが、話を終えた瞬間、王子が脳内で叫び、我慢できなかったよう机を叩いた。

「何だその王太子は!国の事を考えているのか!?アデライトを処刑なんてしてみろ……ランデー公爵家がどう出るか!政治バランスに多大な影響を与え、最悪謀反という結果も……それに、他の貴族で力を持ちすぎる家も出てくる……その状態でアニスを婚約者だと!?国を立て直せると思っているのか!?」
『あなたの物語ですよー。王子ー。そして声に出てますー。』

 怒り心頭の王子に対し、思わず棒読みで突っ込みを入れてしまう。
 え、もうそんな怒れる内容なの?あのゲーム。まぁ作り話だから仕方ないにしても、現実に適用したら、こんな大問題しかないわけ?
 ……楽しめたら良いユーザー的には、どうでも良い事だけど。こうしてリアルで体感してるこっちとしては困る以外の何物でもないか。

『本当に僕の事なのか?……僕の事だとしたら、尚更情けなさ過ぎる。馬鹿どころかクズも良いところだ。いや、クズに失礼だ』
『……そこまで』

 自己価値が激しく落ちているような発言をする王子だが、それは視野が広く、盤面も正しく見れている状態だからだろう。

『……だからこその、精神影響か?君が言うところの強制力のような……』
『まぁ、そういう感じですかね。そういった協力なアイテムが茉莉花の艶でもありますし』
『そしてアニスもそのゲームを知っていると……』
『確実に。日本語で書かれたメモとかもありますからね』

 身体が震える。王子が怒りで震えているのだろう。手の平に痛みが走り、何だと思えば、王子が握り締めていた。
 ……痛みまでも共有しなくて良いと思う……。

『……茉莉花の艶がどういったものか知っているか?』
『いや……違法である事は聞いたけれど……』

 落ち着くように王子が一気に紅茶を飲み干し、自らポットに手をかけて追加を注ぐ。

『茉莉花は愛らしい、温和という意味以外に……従順、好色と言った意味もある』
『げっ!』

 高校生に何を言う!まだ成人してないんだぞ!と心で突っ込みながら、自分が表に出ていたら顔は真っ赤にしているだろう。
 何その媚薬みたいな!魅了みたいな!夜の世界的な意味合い!!
 つまり、課金アイテムってそういう事!?課金してアイテム使ったら、大人の世界に入るようなゲームだったのか!?

『まぁ……そういう事だ』

 俺が脳内でパニックを起こしていると、それを全て肯定するよう王子は言った。
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