51 / 65
51.一緒の身体は不便です
しおりを挟む
「少しおやすみ下さい。胃に優しいものも用意させましょう」
従者の声に王子は頷き、起きたら話そうと伝えてきた。
確かに昏睡状態というか……ずっと寝ていたのだから体調がまだ完全ではない。それでも最低限の指示は飛ばし、アニスを追い詰める段取りだけは起きてすぐに全て行った辺り、王族なんだろう。
さすが英才教育。そんなものと縁もない俺的には、感嘆の声を上げる以外ない。
王子の身体に居る為、眠っている間は、俺の視界も身体の自由も奪われている。まぁ、寝ているのだから当たり前といっちゃ当たり前なのだが……何だろう、この不自由感。
身体という名の拘束具か。意識だけある状態という、何とも言えない不愉快感。
『あ、ごめんね。起きたよ』
『それは……助かる』
体感時間にして5時間。実際に王子が時計を見た時は2時間くらいだったけれど……苦痛な時間は長く感じるってのは正解なんだなと、これからの生活に嫌気が刺す程だ。
『まぁ、そう言わずに。美味しいお茶とお菓子を用意するから』
『……それくらいなら……』
『大丈夫、嫌いなものを言ってくれたら手をつけないから』
起きた王子は簡単に身支度をすると、お茶の準備を頼んでいた。
共有とはいえ、味覚があるのは嬉しいし喜ばしいが、王子が食事した時に嫌いなものを口の中に入れられた時は思わず脳内で悲鳴をあげた。
……嬉しい事だけではないのだ。
しかし、残す事はマナー違反なのだと言えば……手をつけなくても大丈夫なお菓子は安心できるというもの。
本当の願いは、とっととこの身体から出たい事なのだが。
『…………』
この件に関しては突っ込みも入らない程、絶賛スルーをする王子だ。こんちくしょう。
『そのゲームとやらで、皆が辿った道筋を教えて欲しい』
真剣な声色が脳内に響く。……これって言って良いものなのか悩むところではあった。
だって自分がゲームの中に居る人間で、既に未来が決まっていて、それを知らずに洗脳のような形を取らされていたというわけで……そこに自我はない。
それどころか、自分がただの駒になったよう思えるではないが。
『まぁ……知りたいというなら教えるけど』
そう思いながらも、現状に不満を抱いている俺は、八つ当たりの気持ちを含みつつ、知りたがったから教えたという言い訳も出来る状態に罪悪感も多少薄らいだ。
『罪悪感を感じる必要はないから。その方が対策もたてやすい』
『…………』
人の感情までも読み取れるのか。
どこまでも王子の方が上に居る現状は俺に対して不愉快な感情をもたらす。それも含めて全てを八つ当たりのように吐き出す事にした。
従者の声に王子は頷き、起きたら話そうと伝えてきた。
確かに昏睡状態というか……ずっと寝ていたのだから体調がまだ完全ではない。それでも最低限の指示は飛ばし、アニスを追い詰める段取りだけは起きてすぐに全て行った辺り、王族なんだろう。
さすが英才教育。そんなものと縁もない俺的には、感嘆の声を上げる以外ない。
王子の身体に居る為、眠っている間は、俺の視界も身体の自由も奪われている。まぁ、寝ているのだから当たり前といっちゃ当たり前なのだが……何だろう、この不自由感。
身体という名の拘束具か。意識だけある状態という、何とも言えない不愉快感。
『あ、ごめんね。起きたよ』
『それは……助かる』
体感時間にして5時間。実際に王子が時計を見た時は2時間くらいだったけれど……苦痛な時間は長く感じるってのは正解なんだなと、これからの生活に嫌気が刺す程だ。
『まぁ、そう言わずに。美味しいお茶とお菓子を用意するから』
『……それくらいなら……』
『大丈夫、嫌いなものを言ってくれたら手をつけないから』
起きた王子は簡単に身支度をすると、お茶の準備を頼んでいた。
共有とはいえ、味覚があるのは嬉しいし喜ばしいが、王子が食事した時に嫌いなものを口の中に入れられた時は思わず脳内で悲鳴をあげた。
……嬉しい事だけではないのだ。
しかし、残す事はマナー違反なのだと言えば……手をつけなくても大丈夫なお菓子は安心できるというもの。
本当の願いは、とっととこの身体から出たい事なのだが。
『…………』
この件に関しては突っ込みも入らない程、絶賛スルーをする王子だ。こんちくしょう。
『そのゲームとやらで、皆が辿った道筋を教えて欲しい』
真剣な声色が脳内に響く。……これって言って良いものなのか悩むところではあった。
だって自分がゲームの中に居る人間で、既に未来が決まっていて、それを知らずに洗脳のような形を取らされていたというわけで……そこに自我はない。
それどころか、自分がただの駒になったよう思えるではないが。
『まぁ……知りたいというなら教えるけど』
そう思いながらも、現状に不満を抱いている俺は、八つ当たりの気持ちを含みつつ、知りたがったから教えたという言い訳も出来る状態に罪悪感も多少薄らいだ。
『罪悪感を感じる必要はないから。その方が対策もたてやすい』
『…………』
人の感情までも読み取れるのか。
どこまでも王子の方が上に居る現状は俺に対して不愉快な感情をもたらす。それも含めて全てを八つ当たりのように吐き出す事にした。
0
お気に入りに追加
65
あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故
ラララキヲ
ファンタジー
ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。
娘の名前はルーニー。
とても可愛い外見をしていた。
彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。
彼女は前世の記憶を持っていたのだ。
そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。
格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。
しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。
乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。
“悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。
怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。
そして物語は動き出した…………──
※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。
※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。
◇テンプレ乙女ゲームの世界。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げる予定です。

転生者だからって無条件に幸せになれると思うな。巻き込まれるこっちは迷惑なんだ、他所でやれ!!
柊
ファンタジー
「ソフィア・グラビーナ!」
卒業パーティの最中、突如響き渡る声に周りは騒めいた。
よくある断罪劇が始まる……筈が。
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しております。

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる