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49.どういう憑き方!?
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「殿下!」
「殿下!分かりますか!?」
――殿下?
浮上した意識の中、現状を確認する前に自分の身体が勝手に動いて起き上がった。
疑問に思う前に、視界が周囲の人間を捉え、口が勝手に動き出す。
「あぁ、分かる……」
「殿下ー!」
「トマ殿下、具合はどうでしょうか?」
……トマ殿下?え?トマ・ディアーズ?攻略対象の?さっきまで話していた……?
え!?どういう事!?
俺自身は、自分の口で叫ぶように言葉で発しているつもりなのに、身体はその通り動かない。
「大丈夫だ、問題ない」
またしても、勝手に動く口。紡がれた言葉に突っ込みを入れたい。
大丈夫じゃないし、問題ありまくりだ。
そもそも、何故俺が王子の身体に入っている?そして、何故勝手に動いている?
アイに憑いていた時みたいに、自分の視点があって、アイを見ているのならともかく……とてつもなく気持ち悪い!
『気持ち悪いって……いや、でも今はこれが精いっぱいかな?』
頭の中で言葉が反響する。てか、これ……この声の主って……。
『王子?』
『考えるだけで話せるのって楽だよね。そして色々教えて欲しいんだけど』
『教えて欲しいのはこっちだ!』
いきなりの展開で頭がついていかない。というか、王子はこの状況になる事を理解していたようだ。……説明しろ!説明をー!
そんな俺の考えは無視するように、王子は安静にという医者らしき者の言葉を遮り、宰相以外へ箝口令を強いた後、素早く着替えて本棚や書類が大量にある部屋へ入った。
……執務室という場所だろうか?なんて思えば、正解、とだけ返事がきた。いや、そこだけ返事を返されても仕方ないんですけどね!?
「殿下……お話があります」
控えめなノックと共に、モノクルをかけた男性が入ってきた。
誰だこれ?と思っていれば、王子が宰相だと脳内で答える。……宰相?つまり頭脳派か。
「少し前、寝言にように殿下が茉莉花の艶を呟いた事がありましたが……覚えはありますか?」
え?
俺に覚えがあるような事を言った宰相は、鋭い視線でこちらを貫く。同じ身体を同じ目線で共有している俺は肝が冷えた。まるで自分自身に向けられているようで、それを普通に受けている王子に驚くばかりだ。
「……それの事で急ぎ動きたいんだよ」
王子の言葉に宰相の眉がピクリと動いた。意外な所で表情が読めるものだな……ただ、何を思っているかまでは分からないけれど。
「夢の中での出来事だけど、念の為……ね。あとは僕自身の経験からかな……あ、しばらく学園には行かないから」
『君が居るから、もう勝手に身体が動くという事もないだろうけど』
『こんな気持ち悪い思いをしてたのか』
王子が語り掛けた言葉に、同情すると共に早く解放してくれという願いを込めて返した。
「殿下!分かりますか!?」
――殿下?
浮上した意識の中、現状を確認する前に自分の身体が勝手に動いて起き上がった。
疑問に思う前に、視界が周囲の人間を捉え、口が勝手に動き出す。
「あぁ、分かる……」
「殿下ー!」
「トマ殿下、具合はどうでしょうか?」
……トマ殿下?え?トマ・ディアーズ?攻略対象の?さっきまで話していた……?
え!?どういう事!?
俺自身は、自分の口で叫ぶように言葉で発しているつもりなのに、身体はその通り動かない。
「大丈夫だ、問題ない」
またしても、勝手に動く口。紡がれた言葉に突っ込みを入れたい。
大丈夫じゃないし、問題ありまくりだ。
そもそも、何故俺が王子の身体に入っている?そして、何故勝手に動いている?
アイに憑いていた時みたいに、自分の視点があって、アイを見ているのならともかく……とてつもなく気持ち悪い!
『気持ち悪いって……いや、でも今はこれが精いっぱいかな?』
頭の中で言葉が反響する。てか、これ……この声の主って……。
『王子?』
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『教えて欲しいのはこっちだ!』
いきなりの展開で頭がついていかない。というか、王子はこの状況になる事を理解していたようだ。……説明しろ!説明をー!
そんな俺の考えは無視するように、王子は安静にという医者らしき者の言葉を遮り、宰相以外へ箝口令を強いた後、素早く着替えて本棚や書類が大量にある部屋へ入った。
……執務室という場所だろうか?なんて思えば、正解、とだけ返事がきた。いや、そこだけ返事を返されても仕方ないんですけどね!?
「殿下……お話があります」
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誰だこれ?と思っていれば、王子が宰相だと脳内で答える。……宰相?つまり頭脳派か。
「少し前、寝言にように殿下が茉莉花の艶を呟いた事がありましたが……覚えはありますか?」
え?
俺に覚えがあるような事を言った宰相は、鋭い視線でこちらを貫く。同じ身体を同じ目線で共有している俺は肝が冷えた。まるで自分自身に向けられているようで、それを普通に受けている王子に驚くばかりだ。
「……それの事で急ぎ動きたいんだよ」
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「夢の中での出来事だけど、念の為……ね。あとは僕自身の経験からかな……あ、しばらく学園には行かないから」
『君が居るから、もう勝手に身体が動くという事もないだろうけど』
『こんな気持ち悪い思いをしてたのか』
王子が語り掛けた言葉に、同情すると共に早く解放してくれという願いを込めて返した。
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